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お願いもお礼もしました
ガシャンと鍵のかかる音までして、中でテリーとタタがいいあっているのがきこえる。
「 ・・・おいおい、まてよタタ、おれたちはただ、話し合いにきてるだけだ。それに、テリーはなにもおれたちの肩をもってるわけじゃなくってな、」
ライアンがそこまでいったとき、中が突然しずかになり、ガシャンと音がして扉がひらいた。
「思ったより、広くて入り組んでるぜ」
ドアを開けてみんなに言ったのはケンで、ライアンがきくまえに、「裏から入った」と説明する。
「 ―― 裏の方に、台所があったんで、そっちにいた女にいれてもらった」
ジャンにとがめられるまえにケンが言い訳し、ウィルが、どうせおどしたんだろ?と眉をひそめる。
ケンは上着からどこかでみた菓子をとりだしふってみせた。
列車で買ってたやつだ、とザックがおもいだしてゆびさす。
「 ちゃんと『お願い』して、『お礼』もした」
ケンは勝ったようにウィルにその菓子をわたす。
「 レイの『しつけ』がようやくしみこみだしたか」
バートがめずらしくほめるような声をだし、それをにらんだケンが、ドアを全開にした。