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垂れたロープ
「 ―― おい、ルイ、岩登りなんてきいてねえぞ」
面倒そうにバートがきりたった崖をみあげる。
雪の壁だとおもったものは、切り立った崖に降り積もった雪だ。
ザックはその崖というか、巨大な岩をみあげ、そこから垂れているものに気づいた。
テリーが、その風に揺れるロープをつかむと、へいきだよ、と壁を登り始める。
ライフル以外の荷物がちいさいせいもあり、軽い身のこなしでのぼってゆく。
「 まあたぶん、おれがこどものころつかったロープとは、取り換えてあると思うよ」
のんきなことを言って、警備官用の大きな荷物を担いでいるルイも、すぐあとに続く。
「ぼく、高いところ苦手なんです」
ロビーが恐れるように崖をみあげたが、ケンにいやおうなくロープをもたされ、ザックの、上だけみろ、という助言のせいか、荷物を背負っていても、すんなりとのぼりきった。