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食べちゃった
「 まあ、とにかくさ、それでこんなに過ごしやすくなってるんだから、いいと思うよ。 これなら寝袋とかもいらなかったんじゃない?」
ウィルがじぶんの背負う大きな荷物をさすのに、テリーは何度もうなずき、水だってすぐでるんだ、と台所をさして、たちあがると、「外には肉だってある」と窓をゆびさす。
「 冬場は、おれが山にはいったときにつかってるんだ。先月きたときに冬用の冷凍庫に、鹿の肉もいれておいた。そこに野菜だってあるし、ここの棚には食事の缶詰も・・・」
ひらいた棚にあったのは、お茶とクッキーのはいった缶だけだった。
食べちゃったんだろ?ときくザックに、ぶるぶると頭をふる。
「 ・・・いや、ここにある缶詰はお客用で、スープとか、煮豆とかで・・・」すみにあるごみ箱をあけ、「 あ 」と声をあげる。
ライアンがよこからのぞき、捨ててあるな、とみたままをいう。
「やっぱり食べちゃったんだろ?いいじゃん、肉があるなら」
「いや、だって、肉をしまったときにも・・・ 」
言葉のとちゅうでテリーがあわてて、台所にある小さなドアをひらき、外へとびだした。