宿泊施設
テリーが、まるで自分がほめられたようにうなずいた。
「ここまで登ってこの山小屋をつかう人間は限られてる。フォロッコからアペレ山に入っても、教会から先はいきなり切り立った崖ばっかりで登山ルートはないし、あの崖は素人にはのぼれない。 モーティス山脈をめざすプロの登山家は、こっちからはのぼるなんてないから、ここまで登ってきてこの山小屋をつかうのは、ちょっとした山登り気分をあじわいたい人たちだけだよ。 日帰りで気楽にキャンプに来るところでもないから、ガキにあらされることもないし、夏場は、かあさんとタタで、予約制の宿泊施設としてひらいてる」
暖炉そばの揺り椅子をゆらしたテリーに、金をとってるのか?と台所の椅子にすわるライアンが、いぶかしげにききかえす。
だって、とすこし怒ったような声がかえる。
「 ―― ここの山小屋は、教会と同じ扱いで、先住民のものだよ」
「まあ・・・たしかにそうだが・・・。『予約制』で経営してるとは知らなかった」
とがめられたのかと思って身をのりだして言い訳をしようとしているテリーに、ロビーが手をふって、だいじょぶだよ、と安心させる。
「ぼくは、なんとなく知ってました。山小屋まで案内する係のテリーの家をきいてくるひとたちが、みんな、《上流階級》っぽいかな、とおもっていたので・・・」ちらりとライアンをみる。
視線をうけた男は首をふりながら、へんなところで気をつかってくれたわけか、とロビーとテリーをみかえした。