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強風
おくれて参加したザックとロビーが穴をほるころには、大岩の横に、どけた雪をかためてできた囲いがすでにできあがっており、ふみかためたそこにみんなですわりこむと、ようやくじかにあたっていた強風から逃れられた。
「たしかにひどい風になったけど、まだ、遭難するほどじゃない」
ライアンが保温ポットをとりだし、キャンプ用のアルミのカップ三つについだコーヒーを、みんなで回し飲みしてゆく。
「おかしいなあ・・・天気予報はここまで風が強くなるなんていってなかったのに」テリーが不安そうにあたりをみまわす。
またさっきより風がつよくなっているように感じ、ザックもとなりのケンをみた。
目があった男は左手の手袋をはずしてこちらにむける。
傷跡が、泡立ち、ぐちゅぐちゅといやな音をたてている。
「うわ、ひどい。やっぱり消毒しておけばよかったのに」
ロビーが後悔するように言うが、警備官たちは嫌そうな顔でケンの手をみるだけだった。