ニコルのシャベル
ライアンとおなじような《保安官》の防寒着をきているロビーは、顔色も悪くなっていて、さっきまた、こんなところまで来たことはない、とぶつぶつ言っていた。
「大丈夫です。ただ、風がつよくて」
耳あてのついた保安官の帽子を、両手でぐっとひきさげた。
こちらをふりかえったライアンが、あれが見えるかと、むこうで雪が縦に積もっている場所をさし、あそこで休む、とみんなに伝える。
「・・・休むって・・・」
どうやって?ときく前に、うしろからケンがはりきったようにすすみでた。
ウィルも、「ようやく休憩だよ」とザックたちをぬいてゆく。
雪があんなふうに積もっているのは、そこに岩があるからだとテリーが説明した。
ルイもあのあたりにあった大岩を覚えているという。
風のむきで岩の片側にふきだまった雪を確認し、テリーが「こっちだ」といいながら、ライフルの銃床で雪をほりはじめる。
ウィルもすぐに加勢し、ケンは背負ったバッグの中からとりだした筒をいくつかつなぐと、それで雪をほりはじめた。そんな組み立て式のシャベルどうしたんだとルイがきくと、ニコルのロッカーから持ってきたという。