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越された
振り返ると、かなりの高さまできているのが確認できた。
眼下にひろがる木のあるひろい斜面は、のぼってきたとはいえ、やはり山というよりは森の感覚に近いかもしれないとおもうのは、こちらが緩やかな道だったからだろう。
たしか、ライアン班のほうは、崖ぎわの道をゆくと言っていた。
「越されたな」
ジャンの声で進む先をふりかえってあおぎみた雪の斜面と空との境目に、男の頭がゆっくりと生えてきて、ケンだとわかる。
はやく来い、とさけび、あおるように腕をふっている。いまいくよ、とザックは叫び返した。