ファイル№19 ― おまじない
目をとめてくださる方、おつきあいくださっている方、ありがとうございます。 ここで半分ですので、よろしければ、もうあと半分、おつきあいください。。。。。
ファイル№19 ― おまじない ―
ジャケットのフードをかぶったザックは、ふってくる雪があたる音をずっとじかに耳にして、目に入る白い景色も、さっきよりもずっと『なにも無』くなっていて、寒いし、自分の口からでるのは白い息だけで、なんだかちょっと、嫌になっていた。
「おい、息」
「え?」
「整えろ」
命じた班長はまたすぐに前を向いて進む。
その後ろについた副班長が、わらうようにうなずいてつけたす。
「肺に負担がかかるほどじゃねえが、空気が冷たいからゆっくり呼吸しろよ」
「 うん。わかった」
言われて、リズムが乱れていた呼吸を、整えるようしてゆっくり息をつぐのを、すぐうしろにいたロビーもまねる。
「さっきより、だいぶ《何もない》ですよね」
ぼくもここまで登ってきたことはまだ二回しかないです、とはずかしそうにいうロビーが、あたりに生えた木々のことを言ってるのはわかる。
白い雪の中にあった木の黒い影たちはどんどんと数が減り、もうまばらにしか生えていない。