スーフ族の差し入れ
「 ヤアアアックウウ! 警備官たちよ、おれたちからのさしいれだあ! 」
みあげたむこうに生える木の影から、数人のおとこおたちが姿をあらわすと、弓を持った男が両手をかかげてわらいながら消えた。
「《スーフ族》からのさしいれか」
攻撃じゃなくて、からかうのが目的だろうと、ルイがしゃがみこんでいたライアンを立たせる。『攻撃』だと思ったのは、どうやらライアンだけのようだった。
二本のうち一本の矢には小さな革袋がついていて、とりあげたウィルが中に指をつっこみ、「煙草だね」と中につまった煙草の葉にうもれていた、手巻きの細い紙煙草をつまみだした。
矢のほうをじっくりとながめていたケンが、ライフルのケースにそれを二本とも突っ込んでしまう。
「 スーフ族が吸う『レジット』には、《薬草》が混ざってるって知ってるだろ? それが、この袋にはいってる」
ウィルが手にしている革袋をふってみせ、ルイがケンのようなにやけた表情をうかべ、それの中をのぞきみる。
「でも、その《薬草》は、法律的には問題ないが、痛み止めの作用がある植物だ。 大量に摂取すれば、意識がもうろうとして、記憶がとぶ」
ライアンがすかさず指摘する。