説明はきいてました
「でも、あいつのおかげで道ができて歩きやすいよ」
ルイの感想にはライアンも賛成だった。
貴族という《種族》に対して勝手に抱いていたイメージと違い、どうやら気が短そうなウィルは、ふりかえらずに勝手にすすむ。
はじめはそれを止めようとしたのだが、《即席の班長》であるじぶんの注意を《警備官》の男たちがきくわけもないか、とおもいなおした。
「こまかい地形も知らねえのに、あんな速さでのぼるのはバカだって、 ―― ライアンもいってるぜ」ケンは最後だけ、大声で上にむかってさけぶ。
「いまのところ口に出して言ってないけど、そろそろ言おうと思ってたところだ」
ライアンが同意してうなずくのに、ほらな、と得意そうにわらう。
上のほうで腕を組んであたりをみまわしていた男が、肩をすくめる。
「景色がいいもんだから、つい足がはやくなった」
「『景色がいい』ってことは、こっち側は切り立った地形だからだぜ。あそこからの、なだらかな白い斜面のしたにあるのは、ごつごつした岩場だろ?」
滑り落ちたら雪の下にかくれてるその岩にあたって死ぬことになる、と指をさす。
ライアンが、ちゃんとおれの説明をきいててくれたみたいだな、とケンにいうのに、おれだってきいてたよ、とウィルが主張する。