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A班のパパとママ
「これって、まえにライアンが通ったあとかな?」
ザックがロビーにきくが、首をふられ、それじゃあ、とテリーをふりかえる。
「おれは、きのうの雪がふったあとは山にはいってない。 これは、昨日の雪がふったあとにだれかが通ったんだ」
「それって誰?」
ザックの質問にテリーはものすごく困った顔をしてから、『狼男』かもしれない、と小声でこたえた。
きこえていたらしく、ジャンがふりかえる。
「たしかに。この《ひとが通ったあと》って、山の下のほうにはなかったもんな。 これがこのまま教会まで続いていたら、『狼男』が教会からちょっと出て、それから戻ったっていう道かもな」
でも、ここまでなにも食ったあととかなかったじゃん、とかえしたザックにも、「たしかにそうだな」と、ジャンはほほえんでこたえる。
「 ―― あのひと、なんだか、やさしい父親みたいな人ですね」
テリーがそっとつぶやくのに、ザックがゆびをならし、「うちの班には、ジャンっていうパパと、ニコルっていうママがいる」と自慢げにかえすのを、父親に例えられた男は微妙なかおで眺めていた。
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