123/260
彼は『いいひと』
みんなが自分をみているのにひるんだように、テリーは視線を左右にゆらし、あごをひくようにうなずいた。
「 彼は、いいひとなんだ」
「その『いいひと』が、行儀悪く、いろいろ食い散らかしてるってあんたは思ってるんだな? 本人に注意したのか?」
ケンがにやにやしながらきくと、テリーはまじめな顔で首をふる。
「注意はしてない。 きっと、やってても彼は覚えていないよ。でも、母さんが言うみたいに、人を襲ったりなんて考えられない。本を読むのが好きだし、絵もかくんだ」
「刑務所に入ってからそういうのに目覚めるやつらっているけどね」
前髪をはらう男にいいはなたれ、それいじょうなにもいえなくなったテリーは、ライアンに救いをもとめる眼をむけた。