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そのアマンダ
「おまえのまえは誰だった?」
いきなりの低く冷たい声に、テリーは身をこわばらせて、バートをみた。
ジャンがためいきをつくように、テリーのことをやさしくよんだ。
「テリー、この男は怒ってるんじゃなくて、こういう口しかきけないんだ。 こわがる必要はないからな。 ―― で?きみのまえは、だれが狼男に薬を?サマンサじゃないのかい?」
「母さんじゃない。かあさんは・・・狼男にいい感情をもってないし、いろんなことに怒ってるから・・・」
じゃあ誰?とザックがせかすように身をのりだす。
「アマンダだよ」
「 ―― なんだって?」
こんど身をのりだしたのは、ライアンだった。
ちょっとまて、とテリーに片手をあげてみせる。
「 テリー、よく考えて話してくれ。 ―― アマンダっていうのは、まさか、ダゲッドム族で、サマンサのいとこのアマンダとか、・・・いわないよな?」
「そのアマンダだ。ほかにアマンダはしらない」
「・・・・いや、だから・・・」
ライアンは口をあけたまま、ジャンとバートのほうをみる。