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掟
「『うけいれてる』、って・・・えーとその、『ひどい扱い』っていうのは、閉じ込められて、きみに、薬を飲まされている、っていうことかな?」
ジャンが頭をかきながら質問するのに、テリーはすぐにうなずく。
「心配してくれている。おれのことを。 だけど、タタはちがう。おれの母さんもだ。『掟』では『狼男』を自由にしたらだめなんだ。ダゲッドム族とスーフ族で、取り決められたからだ。ほかの先住民族たちも協力してくれてる。なぜなら、それは大事なことだからだ」
つまり、とジャンがやさしくききかえす。
「 ―― 教会にはきみのことを心配している『狼男』がいるけど、おれたちが教会に行ったとしても、 ―― 呪いのことはおいておくとして、―― タタっていう教会を管理するお年寄りや、きみのお母さんが賛成してくれないかぎり、『狼男』には会えないってことかい?」
「そうだ」
「なるほどね。それで、きみはこんどの食い散らかしの『犯人』は、初めからその『狼男』だと思ってる?」
「・・・だと思う。あんな食い散らかし方は、この山にすむ動物たちはしない」