待っていた悲し気な男
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まだ陽ものぼらない時間の朝は、厚い雲のせいもあり、夜とおなじくらい真っ暗だった。
肌を突き刺すような寒さはきのうと同じほどだったが、雪はふっていなかった。だが、きのうまででじゅうぶんこのあたりにも雪は積もっている。
保安官たちの家をでて、山に入るための道をあるいてゆくと、石積みの塀がつづき、その終点に古い車がとまってまっていた。
中にいた男がゆっくりでて、うつむくようにライアンに挨拶してから、《警備官》たちをながめ、ききとれないほどの声で歓迎のあいさつをした。
毛糸の帽子に量のすくない長さだけあるい顎髭が、細身で神経質そうな男を愛嬌のあるものにみせている。年季のいった革の上着はザックたちがきているものとちがって薄そうだが、デニムパンツの上に、腰から膝までの革あてのようなものをはいている。
じぶんの腹を抱えるように両手をまわした男は、テリー・ラッスヒーン・ダガンジュニアだ、とながい名を紹介し、自分が最後のダゲッドム族だとつけたした。
「 ライアンは、友達だ。だから、ぜんぶはなしたが、 ―― 教会には、『狼男』がいる。森に落ちてたのは、彼の食い散らかしだと、おれは思う」
声もはなしかたも静かで、ひどく悲しそうな眼をしている。