ファイル№17 ― 山へ
ファイル№17 ― 山へ ―
薄い灰色の雲に覆われた空と、それとそれほど色の違いはない地面をみて、白という『色』よりも、なにも『ない』、と感覚がわきあがり、ザックはとなりのジャンが背負ったバッグをそっとつかんだ。
気づいた副班長が安心させるような笑顔をうかべて、へいきか?ときく。
「いまのところは。・・・でも、雪がふってきたら、わかんない」
小声でこたえるザックを、ロビーがいがいそうな目でみる。
「ほんとに?てっきり、『まかせとけ』っていうかと思ってたのに」
「いや、おれ、・・・雪なんてほとんど見たことないし、寒いし、静かだし・・・」
そうか、ケンがいっしょじゃねえもんな、とわらうジャンに、ケンは関係ねえよ、とおこったように言い返す。
「とにかく、―― なんか、雪山って、はじめてだから」
「わかります。こわいですよね」ぼくはいつもこわいです、とロビーは斜面をにらむ。
前を歩く、毛糸の帽子をかぶった髭の男が、ほんとかよ?と勢いよくふりかえり、むずかしい顔をすると、ロビーによって、それはライアンに言わない方がいいと小声でつたえる。
「そんなこといったらライアンは、きみのことを《相棒》から、はずすっていうかも」
「・・・そうだね」
ちょっとわらうようにうなずくロビーは、ザックにじっとみられているのに気づいて顔をそらした。
―――――