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遠吠えは合図
「 そういやあ、おれたちが着いてから、あの遠吠えしないな」
思い出したようにザックがいうのに、きいたのか?とライアンとロビーが驚く。
列車の中でね、というルイのこたえに、それなら『野犬』のほうだな、と保安官はわらう。
「きいたのはまだバーノルドとステラの森との境目あたりでだろう?それならきっと『野犬』の遠吠えだ。このごろステラの森のほうじゃ野犬はみない。バーノルドの森とのさかいめに、かなり溜まってるようだ」
当然だな、と暖炉のまんまえにすわったケンが、燃え続ける炎をわらうようにつづけた。
「 ―― 正体不明の『獣』がいる場所になんて、『犬』はよってこねえ。 だけど『犬』たちが、そいつの《正体》を知っているうえで、じぶんたちの縄張りを明け渡したんだとしたら、 ―― 《遠吠え》は、おれたちライフルをもった人間が、そっちにむかったっていう《合図》かもな」
ばちん、と薪がはぜた音が、同意の返事のようにロビーにはきこえた。