生かしておく理由
すぐにルイが、さっきのはなし聞いてたか?と確認し、「おれたちは歓迎されてないんだぞ」と指をまわした。
「 ―― だいいち、保安官がひとりで行ったときにも、いなかったんだ。さらに《警備官》なんてよそものがついていって、大事な『狼男』をみせてくれるわけないだろ」
『大事な』?とききかえしたのはロビーだった。
みあったザックも首をかしげる。
「閉じ込めてるだけで呪いがくるのに、まだ生かして手もとにおいてるなら、《殺せない理由》が、なにかあるんだろ」
バートのこたえに、ライアンも首をふり、「テリーもそこまで理由は知らないらしい」と嫌そうな顔をする。
「なら、『理由』は教会のじいさんに聞けばいい。 ―― いいか、まだ、獣をくいちらかしてるのがその『狼男』だと決まったわけじゃねえ。あしたは油断せずにすすめ」
班長は、以上だというように手をふると、ライアンに、家の電話をかしてくれと頼み、さっさと隣の家にむかった。
みおくったジャンがすかさず、「電話代の請求、かなりのうわのせでしたほうがいい」と提案する。
わらってうなずいたライアンは、雪がすこし小ぶりになった暗い空をみあげ、せめて明日はやむといいんだが、とこぼす。