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第2話 生きているのか、それとも、死んでいるのか。

 ――何がどうなったんだ?


 伝説級の魔物、ドラゴンに殺されたはずの俺がなぜこうして生きているのか、理解ができなかった。


 いや、これは生きていると言っていいのだろうか。


 スケルトンは典型的なアンデッドモンスターで、死者の遺体から生まれる魔物である。聖職者の浄化系魔法によって容易に消滅するほど、非常に脆弱な存在だ。


 スケルトンが浄化魔法で消滅するのは、彼らが神聖な秩序に反する邪悪な存在であるためであり、神の原則が〝死者はこの世にとどまってはならない〟という摂理に基づいている。この原則に抵抗して現世にとどまっているため、浄化魔法によって消滅するというのが一般的な理論となっている。これが正確かどうかは俺には判断できないが、この理屈ではスケルトンは死者の存在と見なされているというのが重要なポイントだ。


 つまり、俺は死んでいるということだ。

 死んでいるにも関わらず、なぜか生きている。

 なんとも複雑な状況だ。

 一言でいってしまうと非常にまずい状況である。


 当たり前だが、死んでいるのにこの世に存在しているという状況自体がよろしくない。

 このまま地上に戻ってしまえば、間違いなく大騒ぎになってしまう。いくら口で俺が不死川宗介だと説明したところで、誰が信じてくれるというのだろう。

 話を聞いてもらうどころか、ダンジョンから出てきた俺を見た瞬間、同業の探索者(シーカー)たちにタコ殴りにされてジ・エンド。最後は聖職者の浄化魔法で消し去られる未来が見える。


 それだけは絶対にダメだ。


 骨と化しているが、俺はなおも生きている。生命があるということは、まだ助かる手段だって残されているはずだ。

 妹の雪菜のためにも、ここで諦めるわけにはいかない。


 だが、このままだと地上には上がれないよな。


 では、どうすればいいのか……。


 ずっとこの迷宮に住み続けるというわけにもいかない。不人気なダンジョンとはいえ、それでも多少は探索者(シーカー)が訪れる。妹の入院費の支払いだってある。支払いが遅れても、少しくらいなら待ってくれるとは思うが、あまりにも遅れて病院側に迷惑をかけるわけにはいかない。

 ダンジョンを彷徨っている間に退治されてしまう危険もある。


 まいったな……。


 と、頭を抱え込んだところで、俺はあることを思い出した。


 探索者(シーカー)が魔物を倒すとレベルが上がるのと同じく、魔物にもレベルの概念が存在する。ただし、唯一の違いは、魔物がレベルアップするときに稀に上位の存在へ進化するということだ。


 俺が魔物なのかはっきりとは分からないが、見た目はスケルトンと変わりない。そうなると、俺にもできるんじゃないか、レベルアップによる進化。


 と、ふと考えてしまう。


 スケルトンから進化する魔物とは、一体どのような魔物だろうか。

 スケルトンウィザード、あるいはゾンビだったらどうしよう。見た目だけなら骨だけのスケルトンよりはマシかもしれない。しかし、ゾンビとなれば腐肉との付き合いになる。臭いが気になることは否めない。

 幾分人間に近づいたとしても、悪臭を振りまいていては逆に目立ってしまうかもしれない。


 だからと言って、このままというわけにもいかなかった。

 これは、もはや賭けだな。

 何れにしても、進化しないことにはダンジョンから一歩も出られないのだ。


 一か八か、進化を目指すしかない。

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