8、心臓の高鳴り
.....。
☆(夢洲なぎさ)サイド☆
そもそも私には伸晃しか居ない。
なのに何をやっているのか。
思いながら私は映画を観てから表に出て来るとそこに.....薮嶋が偶然なのか居た。
私を寝取った.....人だ。
その姿にビクッとする私。
「やあ」
「.....薮嶋くん。どうしたの?」
「いやいや。君に会いたくてね」
「.....」
これは嘘だと思う。
何故なら私は薮嶋に沢山の女が居る事を知っている。
私はその事に触れてない。
だけど事実だ。
それは全て知っている。
取っ替え引っ替えしているのも。
私は思いながら「.....そう」とだけ返事をする。
すると薮嶋は「なあ。今から付き合える?」と聞いてくる。
「今から?.....今から何処に.....あ」
「そうだね。.....そこに行きたいんだけど」
ホテル。
つまり薮嶋の得意分野だ。
私はその事に俯きながら「今は」と言いかけたが。
伸晃達の姿を見ている事で寂しさが湧き上がってきた。
それから「.....分かった」とだけ告げる。
そして私達は動き出す。
何をしているんだろう私は。
私は.....本当に。
☆(佐竹伸晃)サイド☆
寒気がした。
何の寒気か分からないが。
俺は外を見ながら「ふむ」と考える。
すると「先輩?」と聞いてきた。
目の前の小動物.....もとい渚がだ。
「何でもないよ。渚」
「そうですか?なんだか.....体調が悪そうですけど」
「大丈夫だ。.....ちょっと寒気がしただけだな。誰かが噂しているんだと思う」
「そうなんですね」
「ああ」
そして俺はまた外を見る。
それから考えながらアルバムを見る。
俺の卒業写真の載っているアルバムをだ。
渚が観たいって言ったので出した。
わざわざ奥の倉庫からであるが。
「先輩可愛いですね。小さい頃」
「そうか?俺は醜いクソガキの様に思えるが」
「そうは思えないです。純真無垢。あはは天使ですね」
「.....そう言ってくれるのはお前だけだ」
そんな会話をしながら俺は渚を見る。
渚はニコニコしながら指差しながら写真を見る。
何故こんなにも良い子なんだろうなコイツは。
思いながら渚を見ていると渚が「先輩?」と向いてくる。
「あ、ああ。すまん。また見ていたなお前を」
「.....もう。どうしたんですか?」
「.....そうだな。.....お前の幼い頃を考えていた」
「私の卒業写真は無いですよ」
「.....え?そんな馬鹿な」
「私.....イジメられての引きこもりでしたから」と答える渚。
そして「教師にもイジメられていました。.....だから写真を撮って.....いや。写真を捨てました」と言ってくる。
俺は衝撃を受けながら「それは親御さんに話したのか」と聞いてみる。
すると苦笑しながら俺を見てくる渚。
「そうですね。.....一応.....お母さんに相談しましたが.....離婚前の話です。.....「アンタが悪い」だそうでした」
「.....ありえない。.....お前みたいな良い子が?」
「私は除け者でしたから」
「ありえない.....」
俺は怒りに.....あれ?
何で怒っているのか?
俺は考えながら落ち着きながら「渚。それは.....親父さんは知っているのか」と聞いてみる。
すると渚は「はい。知っています。だから今私はお父さんの側に引き取られました」と言葉を発した。
そして「お父さんは今.....体に鞭打って頑張ってくれています」と笑みを浮かべる。
「.....母親はゴミだな」
「そうですね。私の人格を否定しましたから.....まあそれも人生かなって。全部私が悪いからですね」
「そんな事はない」
静かに渚を抱きしめる。
それから渚に「よく頑張ったな」と頭を撫でる。
すると渚は「ありがとうございます。先輩」と震え始めた。
俺はその姿に渚をゆっくり抱きしめる。
「.....それでお前は前髪が長いのか」
「.....そうですね。前髪を長くしていれば誰にも見られませんし」
「そんなものかな」
「そうですね。私は少なくとも落ち着きます」
「.....そうか.....しかし人格否定は酷いな」
「そんなもんです。私が悪いですから」
俺はイラッとしながらその言葉を聞く。
母親にも教師にもクラスメイトにも愛されなかった。
その事にキレそうになる。
クソ。
なんでこんな良い子を否定するんだ?
「.....先輩」
「.....何だ」
「貴方は素晴らしい人ですね。.....こんな駄目人間に怒ってくれて」
「俺は素晴らしい人間じゃない。.....当たり前の事だろ」
「だって先輩は人格を否定しなかった。.....やっぱり愛おしいですね」
全て当たり前の事だ。
なのにコイツは。
考えながら俺は渚を見る。
渚は涙を浮かべる。
それから俺を見ながら「あはは。ありがとうございます。先輩」と照れる。
「先輩。暗い話は置いておいて。.....あ。これ修学旅行.....」
「渚」
「は、はい?」
「.....お前を守る」
「.....は?!い!?」
「俺はお前を必ず守る。そして何かあったら必ず俺に言ってほしい」と渚に告げる。
渚はそんな言葉に「先輩。.....口説いてます?」と聞いてくる。
その言葉に俺は「いや!?違うけどな!」と慌てる。
「.....」
パタンとアルバムを閉じる渚。
そして俺に迫ってきた。
俺は「え?」と言いながら渚を見る。
渚は「髪の毛に葉っぱが付いています」と言いながら俺に迫る。
そんな馬鹿な。
20分近く経っているのに!
「.....先輩が悪いですよ」
「な、何!?」
「.....先輩が口説く様な真似をするから.....ね?先輩.....?」
四つん這いで迫る渚。
こうして見ると渚も女性。
俺は赤くなりながら後退りした。
ヤバい.....急にドキドキしてきたんだが.....!?
.....。