<97>意識
意識が無ければ偉いことになるが、^^ 有り過ぎても困る。意識し過ぎるあまり寛ぎの気分を損ねる訳だ。この手の人は神経過敏な性格の人が多い。
逆巻は今日もビクビクと辺りの様子を意識していた。自宅の中で、である。これでは、いつ寛ぐんだっ! と訊ねられても返答するのは、ほぼ無理なように思われた。そうは言っても、これが彼の性格なのだから致し方ない。今朝の逆巻は月曜で出勤日だったから、迫る出勤時間もあり尚更だった。
父親の松一が洗面台前で歯を磨く逆巻の後方へ不意に現れた。逆巻はギクリ! と意識した。
「今日は遅くなるのかい?」
「いやねそれは仕事の都合によりけりです…」
逆巻は暈した。事実、終わってみなければ分からなかったからだ。
「早かったら三松屋のうどん出汁二袋、買ってきておくれでないか。 麺は買ってあるから…」
「ああ、いいですよ…」
三松屋の麺、うどん出汁は美味い美味いと世間で評判で、テイクアウト用に別売もされていた。昆布、鰹、煮干し量の調合が絶妙で、卵かけご飯に合う極上の代物だった。逆巻の父親は、この出汁がお気に入りだったのである。父親と会話している間、逆巻の意識は弱まった。ここまでの流れは何の問題もなかったが、通勤途上では、やはりいつものように意識が昂った。まあそれでも逆巻にとっては日常のことだつたから、そう苦にもならなかった。ただ寛げるひとときは全くなかった。
仕事は父親が訊ねたように早く終わった。そのことを逆巻は意識の中にも意識していたから忘れることはなく、頼まれた三松屋のうどん出汁を買って帰ることが出来た。するとどうだろう。家に着いた途端、ホッ! としたのか、それまで感じなかった寛ぎの気分が逆巻の胸中に滾々(こんこん)と湧き始めた。
人の性格により、意識する多さ少なさは異なり、寛ぎの度合いも違いを見せる??というお話でした。^^
完




