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<87>健康
<85>で書いたお金や<86>で書いた時間があったとしても、健康でなければ寛ぎ気分に浸ることは出来ない。病床に臥せる人が自分の健康を案じながら、どうして寛げるんだ? という話である。
お金もあり、時間のゆとりもある財閥の総帥である鰐山はクリニックの特別扱いの最高級個室で入院の日々を過ごしていた。
「会長、どういたしましょうか?」
「んっ!? 何をっ?」
「昨日申し上げました一件ですが…」
「そんなことは私に訊かず、息子に訊いてくれんか…」
鰐山は不機嫌な声で、本社から派遣された秘書室長に苦言を吐いた。
「ど、どうも…失礼致しました」
秘書室長は左遷を心配しながら、スゴスゴと病室から退去した。
『この身体が言うことを聞けばなぁ~』
鰐山は老いた我が身の不甲斐なさを口惜しみながら、これでは、とても寛げんぞ…と心で愚痴った。
このように、お金や時間が十分あったとしても、健康でなければ何の意味もなく寛げない訳です。^^
完