<81>想定内
考え方が自ら発想する想定内であれば、そんなに慌てる必要もなく寛ぎ気分は揺るがない。その逆なら、心が動揺して寛ぎ気分は吹っ飛ぶ。新たな対応を迫られるからだ。こうなれば、寛ぐどころの話ではなくなり、もう大変なのである。^^
田坂は焦っていた。今日、到着する予定の宅配便が届かないのである。
「…妙だなぁ~?」
田坂は独り言ちるとパソコンのキーを叩き始めた。そして配送業者のホームページにアクセスし、荷物の追跡番号を入力したすると、。現在配送中・・という画面が現れた。いつもなら昼頃には配達されていたが、この日はすでに陽は西山へと傾き、夕闇が迫ろうとしていた。田坂の想定内は脆くも崩れ、想定外の事態になったのである。田坂はどうしたものか…と考え倦ねた。とても寛ぎ気分に浸るどころの話ではなかった。
荷物が到着したのは午後七時過ぎだった。
━ ピンポ~~ン! ━
ドアホンが鳴り響き、田坂は玄関へ急いだ。玄関ドアを開けると運送業者の配達員が立っていた。
「す、すいませんっ! 遅くなりました。ちょっと、事故で道路が渋滞に巻き込まれまして…」
「ああ、そうなの? 別に急いでないから、いいよ…」
田坂は心の内とは裏腹に、方便を口にしていた。ど、どうしてくれるんだっ! 昼から完成させようとしていた工事の材料がないから完成しなかったじゃないかっ! とは、とても言えなかったのである。
このように個人の想定内は時折り想定外となりますから、想定内になるまでは寛ごう! と思わない方がいいようです。^^
完