<72>強行軍
いくら寛ぎのひとときが持てそうでも、強行軍の場合は寛ぎのひとときとはならない。それは飽くまでも、ゆったりとした環境の場合なのである。
鳥川は、さてこの辺でひと息つこうか…と思った。茶の一杯も飲めばそれでいいのだが、腕を見れば昼前になっている。依頼の仕事だったから、今日の五時までに納入しなければならなかった。
『のんびりと茶を飲んでる場合じゃないな…』
長年の勘で、ゆったりと休んでいれば無理だ。強行軍になる…と鳥川は判断したのである。鳥川はふたたび工場の作業所へと戻った。鳥川の読みは正しかった。四時前になったとき、ようやく依頼された仕事が完成を見たのである。運搬を考えれば、ゆとり時間は余りなかった。鳥川はさっそく、その品を依頼された会社へ車で運んだ。搬入を終えたのは四時半だった。工場へ戻ったとき、鳥川は、ゆったりした気分で寛ぎの時を持つことが出来た。一杯の鮭茶漬けのなんと美味いことか…。至福の気分に鳥川は浸った。
バタバタした休息は寛ぎ気分を損ねる・・という、ただそれだけのお話でした。寛ぐ場合は、強行軍はやめ、ゆとりの時間を考えて休みましょう。^^
完