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<7>言い方

 櫛田は疲れて帰ると、妻にお湯を張らせ、ひとっ風呂浴びることにした。

「先にお食事になさいますか、それとも…」と、妻は訊ねたのだが、櫛田は有無を言わせず、「風呂っ!!」と偉そうに言ってしまったのである。思わず口走ったそのひと言が、いけなかった。お湯加減自体は適温で(くつろ)ぎ気分に櫛田をさせたのだが、浴室を出ると、キッチンテーブルの上が、なんともお粗末だったのである。詳細を記せば、少々のお新香と味噌汁、それに僅0(わず)かばかりの昨夜残った法蓮草のお(ひた)しのみだった。櫛田としては魚介類が一品、できれば鱈子のふた腹か、豚肉の生姜焼きぐらいは欲しいところだったから、ひとっ風呂で手に入れた寛ぎ気分はすっかり消え失せていた。ひとっ風呂したのだから、そこはそれ、美味い料理と一杯で寛ぎ気分を倍加させたかったところだ。櫛田は、なんとかならないものか…と、帰宅草々、偉そうに言ったひと言を悔やんだ。このミスを拭えるかどうか? までは分からなかったが、ともかく、ひと言、妻を(ねぎら)おうと刹那、思った。

「偉そうに言ってしまったな、済まない…」

「なんのことっ!?」

 妻は(いぶか)しげに櫛田を見た。

「いや、いい…」

 分からぬげに返した妻のひと言に、櫛田はやはりダメか…と、お新香、味噌汁、残りものの法蓮草のお浸しで済まそうと思った。そのとき、妻が隠していたかのように海老の天麩羅を二尾、小皿に盛り付けて現れた。

「はいっ! 今、揚げたばかりですっ!」

 小皿には美味そうな伊勢海老の天麩羅が盛り付けられて乗っていた。

 俺にはやはり伊勢海老だな…と、櫛田はお伊勢参りをしたときのような寛ぎ気分を復活させた。

 寛ぎ気分は、言い方一つで変化するのである。^^


                  完

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