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<65>先読み

 どんなことにでも言えるのが先読みである。先読みをしておけば、失敗をしないで済むだろうし、したとしても最小限の損失で済ませることが出来る。さらに、先読みをしておけば慌てることもないから、自然と(くつろ)ぎ気分となり、平静でいられるのである。

 ここはプロ棋士の名人戦が開かれている将棋対局場である。

「先手、9九香成り…」

 詰めろが掛けられた瞬間である。ところが、後手の野豚名人は慌てることなく、軽く(さば)いてニンマリと(わら)った。すでにこのとき、野豚名人は先の先まで先読みをして読み切っていたのである。しばらくすると、野豚名人の腕が静かに動いた。詰めろを(かわ)す妙手が放たれた瞬間である。その一手は自陣の詰めろを消すと同時に、相手玉へ反撃の狼煙(のろし)を上げる最善手だった。駒音高く打つ据えられた盤上を見て、『…!』と、挑戦者の鴨鍋九段は心で唸った。そして、静かに頭を下げ投了を無言で告げたのだった。

「百十七手まで、後手、野豚名人の勝ちでございます…」

 その後も野豚名人は先読みしていたのか、局後の感想戦を指しながら、持参した饅頭をひと口頬張り、残ったペットボトルの茶を静かに(すす)った。

 野豚名人の局後のでインタビューである。

「ははは…勝てば好物の饅頭を頬張るつもりの先読みをしておりました」

「お負けになられれば、どうされたんですか?」

「ははは…負けたときは、串団子を(かじ)る心づもりでおりました」

 先読みをしておけば勝負に慌てることもなく、こんな調子で寛げる訳です。^^


                  完

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