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<63>ほんのひと時
ほんのひと時でも寛ぎの気分が味わえれば、人は強くなる。いくらそれまで心が萎えていても、である。それだけ人は弱いともいえるのだが…。^^
話は遡るが、時は昭和三十年代である。
「御崎さん、茶にしてくださいましな…」
御崎は大工で、橋口の家の修理をしている。
「奥さん、どぉ~もっ! 切りがつけば休ませてももらいますんで…」
「そうですか。じゃ~あ、ここへ置いときますね…」
「どぉ~もっ!」
御崎は流暢にカンナで木材を削りながら愛想よく答える。
そして数十分後、御崎は、ほんのひと時の寛ぎタイムをとっていた。茶を啜り、菓子鉢の煎餅を摘まむ。ただそれだけのことなのに、御崎の心は寛ぎの気分に満たされていた。
寛ぎとは、ほんのひと時でも満たされる気持なのです。^^
完