<46>不満
不満があれば寛ぎ気分にはなれない。それだけ人の心はナイーブ[繊細]に出来ているということらしい。
田川は、いつもブツクサと小言を垂れる男だった。小言さえ垂れなければ、遥か昔に課長以上になれていた有能な社員だった。ところが、ココというときにブツクサ言うものだから、いつも出世を棒に振っていたのである。そして今日も、同じような繰り返しを犯そうとしていた。ところが、このときの相手は、いつもと事情が違ったのである。
「君が担当者の田川君か?」
「はあ、まあ…」
「随分、場馴れしてるな?」
田川は、それがどうしたっ! と言おうとした。ところが、次の瞬間、相手の飛び出し言葉にたじろいだ。
「私は君のことをよく知っている川山だ…」
「どういうことです?」
田川は、俺の何を知っているというんだ…と訝った。
「ははは…まあまあ、落ちついて。部長にもなれた有能な君がだ。実に惜しい…」
「…」
「寛ぎたくないのかね、君は…」
田川は失礼な男だ…と思ったが、ブツクサ言わずに寛ぎたいとは思った。
「君の心は寛ごうと考えないから不満が爆発するんだ。それで出世がオジャンになる・・ということだ」
「あなたは何者なんです?」
「詳しくは言えないが、私は、ある星からやって来た異星人だ…」
川山は訳が分からないことを言った。
「はあ?」
田川は、こいつは馬鹿か…と川山を思った。その瞬間、田川のブツクサ言おうとする気持は消え去っていたのである。
「まあ、いい…」
田川は、何がいいんだ? とまた、ブツクサ思った。しかし次の瞬間、こいつは異星人なのか…と半信半疑になった。川田の心の中に好奇心が湧き、それと同時に川田の不満は消え去り、寛ぎ気分に心は満たされた。
不満が消え去れば、寛ぎ気分になれるようです。^^
完