<41>万一(まんいち)
寛ぎ気分でホッコリしていても、万に一つということもあるから油断は出来ない。寛いでいても万一の事態に備え、保険をかける必要がある。「是非に及ばず…」では困る訳だ。^^
とある囲碁対局の場面である。
「足立七段、残り時間はありません…」
時計係が事務的な声で考慮時間が無くなったことを告げた。先番優勢の足立七段はその前に打った老蘇九段の一手を軽く見たのか深く考えず、寛ぎ気分で美味しそうな三目を取ってしまった。うっかりした敗着である。その一手が致命的な大悪手となり形勢は俄かに逆転した。上辺の黒一団の大石が死んでしまったのである。憐れ・・という他はない。^^ 三十目以上の±は致命的だった。そのあと十数手、寄せの手数が進んだが形勢挽回には至らず、足立七段は是非に及ばず…という哂い顔で静かに頭を下げた。負けを認めたのである。
「〇〇〇手で老蘇九段の中押し勝ちとなりました…」
棋譜読み上げ係の声が小さく対局室に響いた。
寛ぎ気分でいる最中のアクシデントは普通以上に興冷めしますから、万一という場合の対応を考えておきたいものです。^^
完