表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/100

<40>束縛(そくばく)

 人は束縛(そくばく)から解き放たれたとき、(くつろ)ぎ気分になれる。言い返せば、何らかの束縛があるときは寛げないという訳である。

 とある市役所の健康福祉課に勤める下瀬は白髪(しらが)を気にしていた。年々増える白髪に、下瀬は半ば諦めながらも、何かいい知恵はないものか? …と思案する毎日だった。

「下瀬さん、これ、お願いします…」

「はい…」

 課長補佐の柳川が(どじょう)のようなヌルヌルした、か細い声で下瀬に依頼した。柳川は才女で、万年ヒラ職員の下瀬の直属の上司だった。下瀬は否応なく応諾し、手渡された収入調停簿と予算差引簿を受け取った。そのとき、ふと、下瀬の脳裏に、あるアイデアが浮かんだ。

『そうだっ! 白く染めりゃいいんだ…』

 下瀬の考えは白く染めてしまえば、白髪を気にすることもなくなる…というものだった。下瀬はその日の帰り、チューブ入りの白い白髪染め剤を買い、帰宅したあと、浴室で染めた。

「ワォ! 下瀬さん、どうされたの?」

 翌日、柳川がニンマリと微笑みながら下瀬に(たず)ねた。

「いやぁ~、最近、白髪が増えましたので、思い切りました…」

 白髪は弁解がましく、そう返した。

「そうなの…」

 柳川は小さく(わら)ったが、それ以上は深く追求しなかった。軽く受け流されたことで、下瀬は課内で爆発せずに済んだ…とホッ! と安堵の息を漏らした。そのとき、()も言えぬ寛ぎ気分が下瀬の全身を包んだのである。下瀬の心中に、少しは年老いた感じを庁舎内でアピールすれば、係長にひょっとすればひょっとする…という想いが含まれていなかったか? といえば嘘になるのかも知れない。^^

 下瀬さん、出世しなくても束縛されない安定したヒラで寛ぎ気分を維持し、頑張って下さい。^^ 


                  完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ