<28>気温
最近の気温は過去に比べると随分、変化している。昭和三十年代の夏なら日射病くらいで済んだものが、最近だと熱中症で病院搬送である。真夏日ならまだしも、猛暑日で体温越えの40℃以上の気温で四苦八苦する。何とかならないかっ! と地面を見ながら地球にブツブツと語りかけても返答がある訳がない。^^
とある猛暑日の昼過ぎ、低岡は氷あずきを頬張りながら、滴る汗をタオルで拭いた。
「この暑さ、どうなってんだろうね…」
「そりゃ、低岡さん。地球のクーラーが故障したんじゃないですかね、ははは…」
かき氷機でかき氷を作りながら、氷屋の店主が笑いながら返した。
「かき氷、五杯食ったって、寛げやしない…」
「まあまあ…。愚痴ったって涼しくなりませんよ、低岡さん」
「そりゃまあ、そうだが…」
「隣の会社の冷凍室へ入れてもらったらどうです?」
「あっ! そりゃ、いいかも知れんな…」
思い立ったが早いか、低岡は金を支払うと隣の会社へ急行した。その会社には冷凍保存の倉庫があった。低岡は顔見知りの社員に頼み込んで中に入れさせてもらうことにした。
「まあ、いいでしょ。低岡さんだからな…」
顔見知りの社員は断ることもなく低岡を庫内へ入れてくれた。
「私、交代時間で帰りますから…。交代する係員には言っておきますから、早めに出て下さいよ」
「ああ、どうも…」
低岡は極楽のような低温の倉庫へ案内された。
「それじゃ…」
「ああ、どうも…」
顔見知りの社員が去って半時間、低岡は熱波の外気温とは比較が出来ないほど低温の倉庫内で寛ぎ気分を味わった。だが四十分を過ぎた頃、低岡は寒さを覚えるようになった。耐熱が次第に奪われていくのが感じられる。低岡は、こりゃダメだ…と思うや、倉庫のドアを開けようとした。だがドアはロックされ、低岡は外へ出られなくなった。交代の係員が繁忙で伝言を忘れてしまっていたのである。そして、低岡は次第に…。
この先、低岡さんがどうなったか? は、皆さんのご想像にお任せ致します。気温を下げよう…と、寛ぎ気分を望むのも程度ものですね。^^
完