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<24>悩みごと

 悩みごとが生じれば、(くつろ)ぎ気分にはなりにくい。

 なかなか新作の筆が進まない作家の竹岡は依頼された出版社に催促され弱っていた。

「これでは寛げんな…」

 竹岡の悩みごとは世間一般では考えられない異質なものだった。

『先生、この前言っておりました次回作、もう出来ましたでしょうか?』

「ああ、アレね。ああ、もう少しだ、もう少し…」

 もう少しもヘチマもない。少しも書いていないのである。だが、馴れとは恐ろしいもので、スラスラとその場しのぎの出鱈目が口から飛び出すのは不思議と言えば不思議だった。

『よろしく頼みます。私の命運がかかってんですから、ひとつ宜しくっ!』

 電話してきた編集部の植松は部長から近々ある異動で左遷も有り得ると釘を刺されていたのである。だから植松としては必死だった。

「わ、分かってるよ…」

 そう言う竹岡には、少しも分かっていなかった。^^ だが、そういった以上、なんとか書かねば、作家としての自分のメンツが潰れる。それが竹岡には悩みごとになっていた。

「お湯加減、いかがですか?」

 静かに書ける環境が欲しいと田舎へ引っ越した竹岡の風呂は昔ながらの(まき)を燃やして沸かす五右衛門風呂だった。

「ああ、いい湯加減だ…」

 妻が外から静かに声をかけた。竹岡は、いかにも(くつろ)いでいる・・とでもいうような声を演出して妻に返した。内心には少しも寛ぎ気分などなかったのだ。

 風呂から上がった竹岡はすぐ書斎へ籠り、執筆に取りかかった。すると不思議なもので、筆が勝手にスラスラと進み始めたのである。

 一時間後、依頼された新作の原稿が完成していた。書き終えた竹岡の身体に寛ぎ気分が(みなぎ)った。

 寛ぎ気分を得るには、悩みごとを一刻も早く解消することが大切なようです。


                  完

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