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<16>基準
寛ぎの基準は定まっていない。人それぞれで寛ぎ気分を感じる度合いが違うからである。
Aという人物はコップ一杯の酒で寛ぎ気分を感じ、Bとう人物は五合は飲まないと寛ぎ気分になれない・・という基準の違いがあった。一升瓶に定規で1cm刻みに印をつけ、一日ふた目盛っ! と飲料の基準を決めている人は、この基準で寛ぎ気分を得られると判断しているのである。
とある場末の縄のれんがかかった飲み屋である。常連の男が枡の上に少量の塩を乗せ、チビリチビリと飲んでいる。飲みプロの枡酒である。この男根いつも一合枡に二杯と飲み量を決めていた。それがこの男が寛ぎ気分を覚える量になっているという、ただそれだけのことである。
飲み終えた男は、手馴れた仕草で財布から勘定を出し、カウンター上へ置くと席を立つ。
「へいっ! 毎度っ!! またのお越しをっ!」
常連客だけに、店の親父も手馴れた仕草でカウンター上の勘定を受け取る。一連の流れが寛ぎ気分を味わえるこの男の基準になっているのである。
いろいろな人がいるもんです。^^
完