<11>準備
寛ぎ気分を得るには、寛げるだけの準備という前段階がある。さあ!寛ごう…などと思っても、それなりの準備がされていなければ寛げない訳だ。^^
鉾逆は、ようやく取れた明日からの特別休暇をどう楽しもうか…と、前日の勤めの帰り、いつも立ち寄る屋台のおでんで一杯やりながら思案していた。
「…どうされたんです、鉾逆さん?」
いつもは語りかける鉾逆の思案げな顔を窺い、屋台の親父が声をかけた。
「いや、なに…。働きどおしでしたから、明日から一週間ばかり休暇がもらえることになったんですよ。それで、どうしようかと考えてたんです」
「さよでしたか。そら、楽しみなこってす。のんびりとお寛ぎになって下さいやし。そうですか…一週間はご無沙汰って訳ですな?」
「ああ、まあ、そうなりますかね。ははは…」
「私ら商売人には分かりやせんが、休暇なんてもんは、そう深く考えない方がいいんじゃないですかね。アレコレくらいはお考えになっていた方がよろしいとは存じやすが…」
「大ざっぱにアレコレくらいは考えときますか、ははは…」
「これは、どうも。立ち入ったことを…」
「いやいや、そうさせてもらいます」
酔いも回り、鉾逆はいつものように勘定を払い終えると屋台を出た。堤防伝いに流れる冷んやりとした心地いい夜風が酔い気分を和ませる。
『アレをしておくか…。となると、アノ準備を明日はしないとな…。こりゃ、休暇どころの話じゃないぞ…』
雑用の準備が浮かび、鉾逆は、とても寛ぎ気分にはなれんぞ…とテンションを下げた。
寛ぎ気分を得る準備は大事だが、そう重く考えない方が、返って寛げる・・ということもある。皆さん、軽くいきましょう!^^
完