表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/100

<1>体力

 人の身体は、心が(くつろ)げる時間を持たないと生きていけないように出来ているようだ。労働するだけで身体的なケアを怠れば身がもたないのである。身体とは心身であり、特にこの場合は心の安らぎを指す。それを得ることで、フラストレーションやトラウマ、鬱病(うつびょう)に陥る危険性から脱却できる訳だ。これから綴る100のお話は、日々、誰もが体験する寛ぎに関係したお話の数々である。^^

 北岡は体力には自信がある中年サラリーマンだった。

「北岡さん、僕、明日から三日間、休暇もらったんです。すみませんが、いつものようにお願いします…」

 若い西脇に両手を合わせて合掌して頼まれては、毎度のことながら断れない北岡だった。

「ああ、いいよ…。また、山かい?」

「ええ、今度は北アルプスの槍ヶ岳へ登るんです」

「槍ヶ岳か…。俺も若い頃、東鎌尾根から登ったよ」

「中房温泉から入山するルートですねっ!?」

「そうそう! 合戦小屋から東鎌尾根の喜作新道を通って稜線づたいに縦走したな、確か…」

「なんだっ! 僕らと同じじゃないですか…」

「あの頃は体力に自信があったから、20キロは(かつ)いで登ったよ」

「今はダメですか?」

「半分くらいしか担げんだろうな、ははは…」

「でも山はいいですよね…」

「だなっ! 高くなるほど、どういう訳か息苦しさが(まぎ)れる…」

「あの気分って不思議ですよね…」

「ああ、山頂に立って下界を見下ろせば、心が洗われるような気分になるしな…」

「ですよね…」

「仕事は忘れて、リフレッシュしてこいよ」

 北岡はこのとき、自分がいつも寛ぐスナックの美人ママのことを考えていた。体力に自信がなくなってきた最近の北岡の寛ぎは、美人ママを見ながらグラスを傾けるスナックの一杯だった。

 年を重ねれば、求める寛ぎが自然と体力を消耗しない方向へシフト変化するようです。^^


                  完

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ