《救出者》
閉ざされたはずのダンジョンで、通路の向こうから現れたのは予想通り州兵とその隊長だった。意外な展開に、互いの事情を探り合いながらの話し合いが始まろうとしている。
ボクの心の中では今、複雑怪奇な波が寄せては返している。一体どういう事なんだろうか。これから、どんな結末に到るんだろうか。現在の状況が、妨害者の罠である可能性は極めて低い。そう考えた場合、ボクたちは"助かった"事になる。
だが、そこに到る経緯が明かされない限り、完全に大丈夫とは言い切れない。ゼットツ州にとって、もちろん妨害者は"敵"であろうが、ボクたちだって味方とは言い難い"よそ者"なのだから。
軍靴の響きが次第に大きくなり、彼らが通路の曲がり角へ刻一刻と近づいて来るのが分かる。あと数秒でボクたちの運命が決まるのだ。パーティーの皆もそれは承知しているようで、不安と期待の入り混じった表情を見せていた。
そして隊列の先頭者が曲がり角の向こう側から姿を現す瞬間、ボクたちの緊張は最大限の高まりをみせる。果たして一同が目にしたもの、それはザレドスの予想通り、州兵の隊長その人であった。
ボクたちの緊張した顔と中途半端な臨戦態勢を見た隊長はすぐさま状況を理解したらしく、努めて穏やかな声でボクたちに語りかけてくる。
「パーティーの方々、まず言わせて頂こう。皆無事で本当に良かった。そしてここに宣言する。あなた方の敵は捕縛した。危機は去ったんだ」
そう言いながら中年の髭面男は、ボクたちの目の前までやって来た。こちらの警戒心を察してか、残りの兵隊たちはまだ数メートル後ろに待機している。
「捕縛? 妨害者を捕まえたってのか?」
ゲルドーシュが、たまらず声をあげる。
「妨害者?」
「あぁ、州付きの魔法使いの事ですよ。我々はそう呼んでいました。その男を捕縛したんですよね?」
隊長の疑問にザレドスが言葉を添えた。
「その通り。なるほど妨害者か、適切な表現だ、ザレドスさん」
隊長が、あご髭を撫でつける。
「それでなんだが……」
「あ、ちょっと待って」
隊長が話を続けようとするのをザレドスが遮った。
「これはダンジョンに入ってから決まったた事なのですが、このパーティーのリーダーはスタン・リンシードです。話の続きは彼とお願いします」
「なるほど、それは道理だ」
大人の礼節を示したザレドスに、隊長もすぐさま承服する
「ではリンシードさん。いっぺんに話す事は出来ないので、まずあなた方が知りたい事を幾つか言って下さい。ただ、未だこちらも混乱している状態でして、言える事と言えない事があります」
リーダー同士の話し合いの始まりにふさわしい、筋目を通したもの言いだ。ボクは皆の方を振り返る。メンバー誰しもが、ボクにまかせると目で合図をよこした。




