《妖精僧侶の素性》
謎多き僧侶ポピッカ。妖精族の末裔である彼女の素性が段々と明かされる。
「そうか、思い出しました。あの人の形にも似た光の獣。あれはロゼリットスですね? 前に何かの本で見た記憶があります。細部は違いましたが、伝説上の聖なる使役獣だと聞いています」
ザレドスが、自慢の知識を披露する。
「い、いやそれは俺も聞いた事がある。でもよ、聖なる使役獣を召喚出来るのは、あの剣聖スウォードルの血を受け継いだ者だけだっていうぞ」
博識とは言えないゲルドーシュも、戦士の神様と言われるスウォードルの伝説については例外のようだ。
「だからさ、そういう事なんだろうよ。伝説によれば、スウォードルの妻は妖精族だっていうよ」
ボクはいきなり結論を突き付けた。ゲルドーシュの顔色がパッと変わる。
「えぇっ……!? 嘘だろ、おめぇがあの剣聖の! その子孫だっていうのか!!」
ゲルドーシュは先ほどから興奮しきりだ。まぁ、戦士の殆どが崇拝する伝説上の人物の子孫が目の前にいるのだから仕方あるまいが。
「もう、そんな目で見ないで下さいましよ。子孫と言っても、支流の一つですわ」
ポピッカが、ゲルドーシュの視線を痛がっている。
支流。それは本流から幾つも枝分かれした末端の流れ……、あれ? どこかでそんな話を聞いた気が……。あぁ、ガドゼラン魔使具店の娘リュミリーが、自分は王家の末裔みたいなこと言ってたっけ。
「いや、支流だろうがなんだろうが、あの剣聖の末裔には違いはねぇ。何だか知らねぇが、俺は今猛烈に感動しているぜ!!」
「もう、そんな動物園で珍しい生き物を見るような目で見ないで欲しいですわ!」
「何言ってんだ。そんなの目じゃねぇぞ。今のお前には、あの世紀の珍獣プーアンダですら絶対叶わねぇ」
「ゲル!」
悪気はないのだろう。でも”尊敬する剣聖の子孫”に対し、実に無礼な物言いをする戦士をボクはたしなめる。
「い、いやすまねぇ。そういうつもりじゃねぇんだが、とにかく、こりゃぁ目出てぇこった!」
何がどう目出度いんだよとツッコミを入れたくなったが、話がややこしくなるのでやめておく。
「あぁ、そうか。もしかして……」
今度は、ザレドスが言葉を醸し出す。
「なんだよザレドス」
ゲルドーシュが不審がる。
「いやね、ポピッカの例の羽根。普通に混血を重ねていけば、あんなに優れた能力を発揮するのは難しいんじゃないかと思ってたんですよ。やっぱり血が薄まれば薄まるほど、魔族としての固有の力は落ちてきますからね。
だけどスウォードル家の末裔というのであれば話は別だ。これは私の想像ですが、支流とはいえ同家の血を少しでも濃く保つために、出来るだけ同じ血を持つ人達の間で婚姻が繰り返されて来たのではありませんか?」
あぁ、なるほど、さすがザレドス。ボクが全く気付かなかった事をあっさりと思いつくなぁ。




