《おさらい会》
魔獣を倒し、未だ高揚感の収まらぬパーティーメンバー。体力の回復を待つ間に、今回の戦いのおさらいをする事になる。
「それはまた、どうして?」
細工師が振り返りボクに尋ねる。
「戦いは終わったばかりだ。皆、心は未だに高揚してるだろうけど、体力や魔力の回復にはまだ少し時間がかかる。ダンジョンには妨害者が放った刺客以外のモンスターや獣もいるだろうから、そいつらが今ここへ乱入してくるのは避けたいんだ。
妨害者の張った結界は、そういった連中を阻んでくれる障壁になるよ」
「なるほど、それもそうですな」
ボクの説明に納得し、ザレドスは踵を返した。魔獣との戦いは終わったが、全てが終ったわけではない。ボクたちがこの迷宮に閉じ込められている事に変わりはないのだ。
それに妨害者が繰り出すモンスターが、この魔獣で最後であると信じたいが、その保証はどこにもない。
ボクとポピッカ、そしてザレドスは、それぞれのモバイラーからマジックエッセンスを補給する。その間、手持無沙汰にしていたゲルドーシュは、倒した魔獣をあれやこれやと観察して楽しんだ。
「じゃぁよ、体力や魔力がそれなりに元に戻るまで、今回の戦いの”おさらい”をしようや」
魔獣検分にも飽きたゲルドーシュが提案する。
「そうですね。今回の戦いでも驚くべき事がありましたし……」
ザレドスが呼応すと、ポピッカが少し困った顔をした。
今回の魔獣戦、何と言っても最大の謎は、ポピッカの放った聖剣霊獣である。かの存在がなければ、ボクたちは今頃、黄泉の国へと旅立っていただろう。
そもそも、あれは何なのか?
「だよな。で、早速だがポピッカ、あのわけのわからん光の獣は何なんだ……」
車座になって、どっかと腰を下ろしたゲルドーシュがポピッカに詰め寄った。
「あ、ちょっと待って。確かにそれもそうなんですが、”あれ”はあくまで戦いの中の一要素に過ぎません。まずは全体の流れ、すなわちスタンの行動について解き明かしていきましょうよ」
「なんでぇ、ザレドス。”驚くべきもの”とかいったのは、おめぇじゃねぇか」
ザレドスの提案に、ゲルドーシュが噛みついた。
「ザレドスに一票ですわね」
「ボクも」
僧侶とボクが細工師を支持して、戦士を孤立させる。
「なんでぇ、なんでぇ。また俺だけ仲間外れかよ。……まぁ、いいか。すぐに”その部分”に差し掛かるだろうからよ」
魔獣を倒した満足感のせいか、ゲルドーシュは大らかになっているようだ。まぁ、一時的なものだろうけどね。
「じゃあ、スタン。お願いします」
「うん」
ザレドスの申し出を、ボクは快く受け入れる。
「今回の戦いの肝は、いかにして本物の弱点を見つけるかという事だったわけだけど、正直言ってボクも最初は一か八かゲルの勝負勘に賭けてみようかと思ったんだ。
まぁ、結果的にはポピッカの”あれ”の登場のおかげで、考え直したんだけどね」
「”あれ”が時間稼ぎをしてくれたんで、コンシダレーションの魔法を発動する為の、マジックエッセンスを補給出来たってわけですね」
ザレドスが補足する。
「そう、で、熟慮する時間の中で、あるひらめきがあったんだよ。
それは奴の弱点、ビートブラックパイの”名前そのもの”についてなんだ」
「名前そのもの……? そりゃどういう意味だい」
好奇心旺盛なゲルドーシュが食いついてきた。




