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《魔法電信》

最深部到着後、細工師ザレドスは一目散に魔法電信のありかへと急ぐ。これで地上へ連絡がつくかも知れない!

「どうしたい、ザレドスよ。そんな怖い顔をしてさ。見たところ敵も罠もないみたいだし、もう少し達成感に浸ったらどうだい」


両手を上げ、ポピッカ同様伸びをするゲルドーシュ。しかしザレドスの耳に戦士のアドバイスは届いていないようである。


「ザレドス、本当に、どうし……」


ボクがそう言いかけた時、細工師は広間のある一点を目指して一目散に走りだした。


わけがわからぬメンバーが、ゆっくりとザレドスのいるところへ歩いていくと「やっぱり……」という、細工師の落胆した声が聞こえてきた。


「なんだい、一体どうしたっていうんだい、ザレドスよ」


ゲルドーシュが、半ば呆れたように細工師に問いかける。


「残念ながらといいますか、予想通りといいますか、案の定、魔法電信の機材は壊されていますね。これでは外部と通信する事は出来ません」


ザレドスの言葉に皆、ハッとする。最深部へ至った達成感から、魔法電信の件をすっかり忘れていたのだった。油断しているつもりはなかったが、気持ちというのは恐ろしいものである。


「それと私たちがダンジョンに入った後に、地上から電信があった記録はありませんね」


「そりゃ、どういうこったい?」


細工師の追加説明に、ゲルドーシュが聞き返す。


「地下1階の崩落はかなり大きなものであったと思われますから、地上でも異変にすぐ気が付いたはずです。


だったら、たとえ我々が最深部へ到達していない時点であっても、とりあえずは地上側からわかる情報は、この魔法電信機へ送っていると思うんですよ。”救出には何日くらい掛かりそうだ。ガンバレ”みたいなね。


私たちはここまで来るのにかなりの苦労をしましたが、当初は、大した敵はいないという認識だったでしょう。地上の役人や兵士たちは相変わらずそう思っているだろうから、私たちが早々に最深部へ到達してメッセージを見ると予測するはずです。その記録がないって事は……」


「少なくとも、崩落が起きる前から電信装置は壊されていたって事ですわね」


ザレドスの説明をポピッカが結論づけた。


「えぇっと、だからそれはどういう……」


ゲルドーシュの疑問は、未だ解消されていない。


「つまり、かなり計画的だったって事だよ。是が非でもボクたちと地上を切り離そうって魂胆さ。……ただね、そう考えるとチョット引っ掛る事も出て来るんだよなぁ」


ボクは新たな疑問を皆に呈する。


「なんですか、引っ掛かりというのは」


ザレドスが即座に関心を示した。


「今、ここで魔法電信装置を見て思ったんだけどね。これ、結構わかりづらい場所に設置されているよね。そもそもボクが役人から渡された見取り図には、魔法電信については全く書かれていない。ザレドスが何も迷う事なく即座に設置場所へ来れたのは、州兵の隊長から情報を得ていたからだろう?」


「えぇ、その通りです」


「パッと見た限り魔法電信装置を見つけるために物色したような跡はないし、元から魔法電信の存在を知らなければ、探そうという発想すら抱けないと思うんだよね。


加えて言うと、さっきザレドスが示したように、ボクたちはこれまで強力な魔物との戦いなんかで、ここへ着くまでに相当な面倒があった。でもそんな話は事前に聞いていない。当然、上の方でもそう思っているはずだよね。そんな状況で、もし魔法電信が生きていたら、ボクたちはそれを当然の如く上へ報告してただろうさ」


「あっ」


ポピッカが小さく声をあげる。


「つまり”妨害者”は、部外者がわかるはずもない魔法電信機の場所を知っていた。そして大した獣や魔物が存在しないという事前情報と実際が違うという事を、地上の人達にすぐには知られたくなかった……という事ですわね」


さすがポピッカ、察しがいい。


「じゃ、じゃぁ、妨害者っていうのは、もしかして内部の人間って事なのか!?」


ゲルドーシュにも、ようやく合点がいったようである。


「まぁ、内部の人間から情報を得た外部の人間って線もあるだろうが、ボクたちがここへ入る前に既に侵入できた事、ボクたちの探索をかわしながら崩落の細工その他を見事に遂行した事などを考えると、やっぱりキミの言う通り内部の人間の可能性が高いんじゃないかな」


ボクは自分の推理を披露する。


「という事は、そいつは最深部の謎にも関わっている可能性が大きいですな。我々が真相を究明できるかどうか、気が気ではない。……もしかしたら、今もどこかから我々を見張っているのかも……」


「えっ! 奴がこの近くにいるって事なのか?」


ザレドスの言葉に、ゲルドーシュが剣の柄に手をかけ、戦闘態勢に入ろうとする。


「いや、ザレドスが言っているのは、あくまで可能性っていう話だよ。それにもし万が一そうだとしても、奴はボクたちがそれに気づいている事を知ったわけだから、すぐには襲ってこないんじゃないかな。奇襲の効果は随分と薄れるだろうからね」


「ふぅ~、あんまり脅かすなよ」


文句を言いながらも、戦士は臨戦態勢を解いた。


「さぁ、では本命中の本命、最深部の謎を皆で解こうじゃないか」


ボクは皆に号令をかける。


【余談】

魔法電信は、別の物語のアイデアとして出していた物を流用しました。ザックリ言えば、超強力な無線ファックスみたいなもんですかね。ま、見た目は凄くクラシカルですけど。


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