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《再方針》

妨害者の動向も踏まえ、新たな探索方針を話し合うメンバーたち。

「お、おぉ、まぁ、そういうこった」


ポピッカの言葉に自分が空回りをしていると気付いたのか、ゲルドーシュは少しバツが悪そうに元いたソファーへ腰掛ける。


「さてと、これからどうしましょうかね」


ザレドスが切り出す。


確かにここは考えどころである。まずは探索自体をやめるかどうかを決めなくてはならない。妨害者は次々と強力な罠やモンスターを繰り出してくる。今のところ大事には至っていないが、普通に考えれば次はもっと強力な”何か”が出てくるだろう。


ボクは、それについて皆にはかる。


「俺はやめる気ねぇぞ。ここまで来てやめるなんて有り得ねぇ。それに妨害者だか何だか知らねぇが、なめられたまま引き下がれるかってんだよ」


ゲルドーシュらしい意見である。


「私も、出来れば続けたいですわ。ただ、より慎重に行動しなくてはいけないと思いますの」


珍しくポピッカとゲルドーシュの意見が一致する。


「そうですね。私もこのまま探索を続けた方が良いと思います。安全地帯に籠っていれば、無事に救出を待てると最初は思っていましたが、妨害者が安全地帯の破壊を考える事態となるに至っては、全くの安全とは言えなくなったと思います」


予想通りのザレドスの返答ではあるが、ボクは慎重に考える。


ボクたちの仕掛けた罠で、妨害者は肉体的にも精神的にもある程度のダメージを負っただろう。それに妨害者が、完全にダンジョンを潰す様な大規模な攻撃を仕掛けて来るとは考えにくい。


もしそうであるならば、オーガ達との戦いの直後、いちいち安全地帯を破壊しようなどとはせずに、一気にダンジョンを全壊させる方法を使ってきたと思う。実際に地下1階を崩落させる力があるのだから、当然可能という事になるだろう。


しかし、そうはしていない。


やはり何らかの理由で、妨害者は”最深部の秘密は知られたくないが、ダンジョンを破壊する事はしたくない、もしくはしたくても出来ない”と考えるのが合理的だ。


「うん、ボクも進んだ方が良いと思う。だけど今すぐにじゃない。さっきの戦闘で皆、疲れていると思う。きちんと休息を取った方が良いんじゃないかな」


「だけどさ、のんびりしていたら、また妨害者の野郎が何か仕掛けて来るんじゃないのか」


「しばらくの間は大丈夫だろう。罠が発動した後の様子を見ると、奴もそれなりのダメージを受けたと考えられる。さっき言ったように、他の階の安全地帯へも監視の魔使具を配置したし、今すぐにどうこうって事はないと思うよ」


はやる気持ちを押さえられないゲルドーシュをボクは説得する。


「でも妨害者に時間を与えてしまえば、奴が体調を戻すいとまを与えてしまうんじゃないんですかねぇ」


今度はザレドスが、ゲルドーシュの意見を継いで反論してきた。


「う~ん、それは秤にかける必要はないと思うんだ。罠を仕掛けられた事もあるけれど、厄介なのはモンスターだったろう。で、今のところ、妨害者は召喚魔法でモンスターを呼んでいる公算が高い。


その場合、妨害者の体調とは余り関係がない事になるよね。本人が魔法を直接使っているわけではないからさ」


「そうですわね。私たちがすぐに出発したとして、その時に妨害者の体調が思わしくなくても、魔使具から召喚して、あとは出て来たモンスターにお任せになりますわよね。


つまり妨害者に時間を与える与えないは、今は余り重要ではないと思いますわ」


おぉ、ポピッカ、わかっていらっしゃる。


「ただ、あんまり時間を空けるのもどうかな。妨害者がダメージを回復させるのに時間はかかるにしても、頭を使って考える事は出来る。新たな作戦を立てる暇を与える事になってしまうと思うんだ。だから、こちらが想定外に早く動けば、向こうも慌てるんじゃないかな」


「で、結局どうすんだよ、旦那」


せっかちなゲルドーシュは、落ち着かない様子だ。


「今、みんな疲れているって事もあるんで、今日の探索はここまでとして、早めに眠ってしまおう。それで明日の深夜に出発するってのはどう?」


中庸な案ではあるが、理にかなっている自信はある。あとは、みんなの反応だけれど……。


「でもよ、最深部へ行く目的の一つは、そこにある魔法電信の装置だろ。仮に使えたとしてもよ、真夜中に外へ連絡したって通じないんじゃねぇのか?」


「いや、それは多分、大丈夫だよ。今、上では瓦礫の撤去に大勢の人たちが奮闘しているだろうから、真夜中でも、全くそこに人がいないなんて事はないんじゃないかな」


最近、ゲルドーシュは意外と気が付く事を言うよなぁ。答える方も答えがいがあるってもんだ。


もっともゲルドーシュを安心させておいて、こう考えるのもなんだけど、役人が全てを仕切っていて、9時5時で仕事を引き揚げたりしないだろうなぁ……。 せっかく魔法電信を使っても「現在、業務時間外です。朝9時以降にもう一度おかけなおし下さい」なんてメッセージが流れない事を祈るばかりである。


「では、そういう事にしましょうか」


ザレドスも合意して、出発は日付が変わった明日の深夜に決定した。よって探索モードは、ここでいったん終了となり、気安い呼び方や喋り方は通常モードへと戻る事となる。


しばらく休んだ後に夕食の支度が始まった。もちろんポピッカには休んでいてもらい男三人の無骨な料理が食卓に上ったが、たまにはこういうのも良いだろう。


まぁ、とはいっても、元気を取り戻したポピッカからのダメ出しが幾つか入り、ゲルドーシュとのいつもの掛け合い漫才が披露されたのは言うまでもない。


【余談】

推理小説の常道の一つに「仮説を立ててそれを否定する」を繰り返して真実に近づくというのがあります。今回は、そんな感じで。

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