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《廃魔法使いとの戦い》

不気味な廃魔法使いと対峙するスタン。奴の実力は如何に。

「ザレドス、廃魔法使いの周りに罠が仕掛けられている形跡はあるかい!?」


以前、別の廃魔法使いと戦った時、そいつ自身が巻き込まれるのを承知でフレイム系の罠を仕掛けてきた事があった。あの二の舞は御免である。


「大丈夫です。でも奴からは許容量を超えるマジックエッセンス反応があります。気をつけて!」


我らの頼もしい細工師が、有力な情報を与えてくれる。


マジックエッセンスを魔法使い自身の体に充填する場合、各々の才覚に応じた許容量というものがある。欲張ってそれを超えるマジックエッセンスを取り込むと、最悪の場合魔力暴走を起こして深刻な状況になるのだが、寄生虫からすれば宿主の健康など知った事ではないのであろう。


ボクは魔奏スティックの先端から最大出力のファイヤーボールを放つ。もっとも、単なる火炎魔法をファイヤーボールっぽくしただけの魔法であるから、絶大な威力というわけには行かない。でもまぁ、仕留められれば良し、そうでなくとも相手のレベルをはかるくらいの事は出来るだろう。


カウンターを警戒し、魔盾環を突き出した格好で火玉の行方を慎重に見つめる。炎が廃魔法使いに達するやいなや、奴の体は魔法を無効化する赤い光に包まれた。


もちろん詠唱はない。宿主の体を介してとはいえ、実際に魔法を発動させているのは寄生虫である。よって魔物ゆえに詠唱なしで魔法を使えるのだ。寄生虫は、宿主の物理的な肉体と魔力を操れる体質を利用しているに過ぎない。その他に寄生が宿主を得る目的としては、その肉体を盾としたり、移動の便利さであったり、人に見えるゆえ相手の油断を誘えるといったところであろうか。


「だめか?」


ファイヤーボールもどきの効果は全くないようにも見えたが、廃魔法使いが着ているローブの其処ここがフツフツと燃えている。奴は体を覆う小さな火の粉をはらうでもなく、相も変わらず微妙な揺れを保ったまま仁王立ちを続けていた。


「スタン、奴のマジックエッセンス反応がかなり落ちました。今の攻撃は有効だったようです」


後方のザレドスが叫ぶ。


なるほど、つまりは後先考えずに防御魔法を使ったわけだ。まぁ、絶大とは言えないものの、あれだけの火の玉を真正面から受けて無傷でいるには、高出力の防御魔法を使わねばなるまい。当然、マジックエッセンスの消費量も多くなる。


ただ低レベルの魔法使いであったなら、いくらマジックエッセンスが体内に充填されていたとしても、高出力の防御魔法自体を使えない。寄生虫も宿主のレベルを超える魔法を使う事は出来ないから、かの魔法使いは生前、それなり以上の実力者であったと推測できる。


うーん、これは少し厄介だなぁ。


魔法使いの戦い方として、マジックエッセンスをどう消費していくかの配分は重要だ。考えなしに使って行けば、すぐに燃料切れとなり魔法を使えなくなるか、自分の生命力を削って魔法を使用する事になる。


ただ、廃魔法使いに寄生している虫の魔物は自らマジックエッセンスを造り出せるので、ある程度の補充は可能になるわけだが……。


「スタン、やはり少しずつではありますが、奴のマジックエッセンスの充填量が復活しています。先手を打って行かないと」


細工師というのは、本当に探索任務には不可欠な存在だ。罠を見つけたり宝箱を開けるだけではなく、こういった戦闘時にも貴重な情報を与えてくれる。


「わかった!」


みなまで言うなとばかりに、ボクは廃人とかした憐れな魔法使いに向かって走り出す。当然、身体能力アップの魔法を自らに掛けるのも忘れない。


廃魔法使いがまとったローブの中から、マジックワンドらしきものが突き出されたのと同時に、広範囲にダメージを与えるライトニングニードルが発射された。無数の光の針がボクめがけて飛んでくる。当たれば、かなりのダメージをくらうだろう。


しかし、所詮は虫の浅知恵というもの。


相手はこちらが構えている盾の大きさでは防ぎきれないと踏んでの攻撃だろうが、ガドゼラン製の魔使具をなめてもらっては困る。


ボクは魔盾環に魔力を注ぎ込み、対魔法攻撃の盾となる赤い魔方陣の大きさを、ボクの体の全てを覆えるほどに拡大した。魔盾環に充填されているマジックエッセンスの消費は否めないが、短時間であれば問題ない。


奴の放ったライトニングニードルは、ことごとく防御魔法陣に無効化され、残りの針は後方に流れた。後ろのポピッカ達に届く頃には光針の威力は減衰し、彼女のめぐらした魔法障壁を貫くには力不足となるだろう。


全く問題ないとはいえ、自らに放たれた攻撃に対し、ザレドスがどういう表情をしているのか見られないのは残念だ。


ふふっ、ちょっと意地悪かな。


ボクは廃魔法使いの目前まで迫り、先ほど思いついたばかりの奇策を試す。奴の目の前で一瞬体を沈めたあと、おもむろに右回し蹴りを頭部めがけてくり出してみる。


「な、なにを!?」


ポピッカの驚く声が後方より届く。


魔法使いが肉弾戦など一般的には有り得ない。魔法戦士のように、あくまで戦士としての技を補助する為に魔法を学ぶ事はあるものの、単純に魔法と体技を並列に学習する者はまずいないであろう。虻蜂取らずになるのが目に見えているからだ。


しかしボクは、少しずつ体術や剣技を身につけてきた。オリジン・リンシードを追う長い時の旅路において、ボクには時間的余裕が潤沢だった事が大きい。もちろんゲルドーシュのような本職には敵わない。しかしこの組合せは稀有なだけに、相手の意表をついたり惑わせたりするには有効だ。


「ギギッ…!」


歯ぎしりのような不愉快極まりない声を立てながら、廃魔法使いはぎこちない動きでボクの蹴りを避けようとする。奇襲の蹴りは奴の顔面を捉えられなかったものの、ローブのフードを剥ぎ取る事には成功した。


魔法使いの痛々しい頭部が露わになる。


奴の顔面は既に崩れ落ち、もはや目、鼻、口といった区別をつける事は不可能だ。ただ中央に寄生虫の頭にあたる球体の一部が露出し、それが赤く不気味に光っているだけである。


【余談】

廃魔法使いの発想は、物体X的な感じで。

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