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フェンリルに転生した俺、人間に復讐を決意します  作者: アイスマシーン
歪みの生誕
86/122

85.後手

それから暫く時間は経ったが、異変らしいものは一切無い。

人々も忘れかける月日が経っていく。

勇者は少し昔の事を思い出しながら、変わらない幸せの日々を過ごしていた。

「何だったんだろう」

「ん?どうしたの?何かあった?」

リラが首をかしげて僕に聞く。

「何でもないよ。ただちょっと昔の事を思い出しただけ」

「昔の事?何かあった?」



心配そうな瞳で僕を見つめる、トラウマの事を心配しているんだろう。

「……違うんだ、そう言う事じゃないよ。ただちょっと解けなかった謎をもう一度考えてるだけ」

僕がそう答えると、リラは安心したかのように答えた。

「そっか、謎は解けた?」

「いや、何度考えても分からないや」

そんな談笑をしている時、コンコンと家の扉がノックされた。

(何だろうか?)

勇者が扉を開けると、そこには兵士がいた。

「勇者様!へタル国からの支援要請です」

「……何が?」



「情報によるとへタル王都に突如獣人の軍勢が押し寄せ……その数は数万との事です」

「……分かった、すぐに向かう」

勇者は兵士に指示を出した。

「リラ、行ってくる」

「……行ってらっしゃい」

少し複雑そうな顔で、僕を見送るリラ。

僕は少し照れくさそうに続けた。

「すぐに戻るよ……」

リラは寂しそうに手を振り僕を見送った。





へタル国に付けば、すでに壊滅状態の町が見えてきた。

あちこちに死体が転がっているし、魔法の音だろうか、激しくぶつかり合う音が聞こえる。

「なんでこうなる前に呼ばなかったんだ」

王都全域が、獣人の軍隊に攻められている。

城壁は破壊され、王都の門は壊され、町には火が放たれていた。

(―――)

この王都にいる獣人を対象に【転移】を発動する。

そして飛ばしたところへと僕自身も転移する。





その後数人の獣人を残し軍隊は全滅した。

「首謀者は誰だ?誰がお前達を先導している?」

残した獣人に問いかける。

「はは、今に見てろ我らのライオス様がお前を、必ず!」

「必ず!」

そう獣人の声が響いた時だった。突如残した獣人達の目から生気が無くなり、力なく倒れて行った。

「使い捨てか」

(ライオス、ライオス・ベルベット。確かベルベットの王だったはず。でもこんな力があったのか?)

まあいい、それより宮殿にでも言って何があったか言及するべきだ。

そう思い【転移】で宮殿へと向かった。

意外な事に宮殿は綺麗だった、あれだけの事があったと言うのに。



王の間の扉を開くと、「ひっひっぃ!」と情けない声を上げるへタルの王が居た。

「落ち着いて下さい、勇者です。獣人は対処しました」

「ほ、本当か、何だ緊張したじゃないか……」

床にへたり込む様に座り安堵の顔を見せた。

僕は知りたいことをすぐに聞くことにした。

「一体何が起きたんですか」

僕がそう聞くと王は元の王の顔に戻り口を開いた。

「突然、獣人達が現れたんだ。王都に【転移】で直接な……」

「少なくとも僕がここに来るまでに一時間以上は経っていますよね。なんでこんなになるまで僕を呼ばなかったんですか?」



「兵士だけで何とかなると思っていたんだ、でも今の兵はすっかり戦い方を忘れていた。まともな打撃を加えられなかったんだよ……」

……確かに、この数年は平和だった。

「私のせいだ、平和になって軍にかける税を大幅に減らしたから」

「クソぉクソぉ、やばいやばい。このままだと民に見放される……軍が機能せず王都を潰されたなんて」

「とりあえずは生きている民の保護じゃないですか、それから避難所なりなんなり。王としてやることがあるでしょう」

僕がそう言うとへタルの王は立ち上がり言った。

「……そうだな、ありがとう勇者。君の言う通りだ」

「私は民の避難をさせる、君も気を付けてくれ。獣人がいつ攻めて来るか分からない」

「ええ、分かりました」





そのままノアールに帰り女王の元まで報告する。

「獣人たちはライオス・ベルベットの名を挙げていた。ライオスが一連の事態の背後にいると考えるのが速いんですけど」

僕がそう伝えると、女王は眉をひそめて黙り込んだ。やがて、静かに問いかけた。

「ライオス・ベルベット…その名は確かにベルベットの王だ。だが少なくとも、奴があの規模の【転移】を扱える魔法使いではないはずだ」



「…しかし、獣人たちが彼の名を挙げた以上、無視はできないな。ライオスが何者であれ、再度攻撃がある可能性は高い。今後、各国との連携を強化しなければならない」

女王は決意を込めた表情で続けた。

「勇者よ、しばらくの間、各国の防衛強化に力を注いでほしい。ライオスの動向を探りつつ、次なる襲撃に備える」

「随分真剣ですね」



「ハッ、私だって未知の事態には焦るさ。今回は特につかめて無いことが多すぎる」

「何より、今回は必ず後手に回る。あまり余裕が無いんだ」

女王は険しい表情を見せながら僕へ語り続けた。

「まず何よりは各国との連絡を取り、連携を図ることだ。お前も忙しくなる、頼んだぞ勇者」

「分かってますよ」


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