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フェンリルに転生した俺、人間に復讐を決意します  作者: アイスマシーン
二人の精霊
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66.【夢物語】

真っ黒な空間にそこに居るのは私と同じ姿をした人が一人。

「また、会ったな」

「……お前は何なんだ?……私は、何なんだ?」

「質問は一つずつしろ。そしてその話し方は止めろよ」

「ならお前は、誰?」



「私はこの体の本来?いやまあ、最初の魂って言った所か」

「最初?なら私は?」



「おっと二番目じゃねえぞ、お前は三番目だ」

「三番目?」

「ああそうだ、お前という魂が作られた時に無くなったけどな」

「そうか、じゃあ二つ目だ、お前の目的は?」

「そうだな、勇者を殺す事」

「そしてこのループから抜け出す事」

「ループ?」

「ああ、詳しく教えてやるよ」





「私の能力は【夢物語】望んだ物を手に入れれる力だ」

「……」

「まあ、不思議に思うよな。とりあえず聞けよ」

「……分かった」

「この力は私の思った通りには動いてくれない。心から望んだ物を手に入れれるのは確かにそうだが……発動はランダムだ」

「そう」



「私は母親の復讐の為に力をつけ勇者に挑んだ」

「まあ想像通りだ、負けたさ。圧倒的に。その時願った事が『やり直せれば』だ」

「それは叶った。そして私は生まれる時まで戻りやり直した。また、死んだよ」

「母親と共に、静かに過ごしたこともあった、でも死ねばまたループした」

「きっとこのループは勇者を殺すまで終わらない、そのために何度もループしている」

「何度も何度もな、全部で386万5362回」

「何度やっても何度やっても、勇者は殺せなかった」

「いつか、私は思ったんだよ。『誰か、変わってくれ』ってな」

「その願いは叶った。それがお前の元となった魂だ」

「その魂は、この世界で母親が殺され時に私の魂とその魂が合わさった。そして、お前が生まれた」

「その時、その魂は消えちまったけどな」

「そ、う」



「それと、私はお前に色々教えなくちゃいけねえ、このループで得た色々をな」

「例えば?」

「今は、このループ史上最高の状況だって事だ」

「まず、アリュー・ジルベス。この精霊がこっちに付いている」

「アリュー?」

「ああ、あいつはループのほとんどで勇者と共にいた。だが今回は違う、アリュージルベスは今味方側にいる」

「この精霊が居ないという事は勇者は卍天魔法を取得していないという事だ」

「そして、お前という存在だ」

「簡単に言えば私はもう成長しない。例え勇者が弱体化していようと私はあいつを殺せない」

「まあ、卍天魔法なんて私も知らないもんが出てきてんだけど……」

「……」



あの強さをまじかで見た。それでも届かないという事実に驚愕する。

「とりあえず、お前が得るべきは【自己転換】と【極地の祝眼】だ」

「【極地の祝眼】……たしか武人が言ってた。武を極めれば使えるようになる眼」

「【自己転換】は己の肉体を形成する物質をマナに作り替え、マナの肉体を己の肉体とする力」

「それが言ってた目指すべき場所に行くための能力……」

「これを使えば色々できる。例えば、肉体のマナを使い光の魔法を発動させればその速度で移動できる」

「他にもマナを纏っていない攻撃の一切を無効かできる」

「……そして何より、あの精霊が言っていたマナの核。それが見えるようになる」

「……どうすれば、それを会得できる」



「もちろん、実戦あるのみ」

そう言って構えを取る。

「来いよ、お前も私の力、気になってんだろ?」

「…一つ教えて、名前は?」

そう言って私は構える。

「名前か……今はねえな、昔の名でアサインって言った所」

「分かった、アサイン始めよう」

私と私の戦い、でも決着は一瞬で着いた。

(分かってはいたけど……弱いなぁ私)



「まあ、自分の実力が分かったか?」

「最近は嫌というほど」

「よし、なら次だ」

アサインがそう言うと、私の視界が切り替わる。

真っ黒な空間から見覚えのある森の中へ。

「この空間は一体何?」



「私の【夢物語】でできた魂が存在できる空間って言った所だ」

「それと、さっきお前の体に変わったのも【夢物語】のお陰。つまり一回限りだ」

「そっか……どうして、何で今まで出てこなかった?」

「あの精霊だ、あの精霊が私の顕現を邪魔してやがった」

「アリューが?」

「そうだ、あの精霊がなんでか私の存在をお前の記憶から消しやがった」

「理由はお前の魔術だよ、魔術を封印するために。邪魔な私をお前の記憶から消して出てこれないようにした」



「私の魔術が?」

「その魔術【天喰羅威】(アマクライ)

「ガチガチに封印されてるからな、私でも解けねえよ」

「そう、分かった」

アリューがなんでなんて、そんなのをアサインに聞いても仕方がない。ただ受け入れて前へ進まなきゃ。

「分かったんなら本題だ」



「お前を今から全力で鍛えてやる」

「いいの?」

「ああ、そうしねえとお前弱いまんまだしな」

そう言ったアサインは先ほどまでのふざけた態度は無く、一切の油断を感じられなかった。

「そう、じゃあ全力で」

「おっと、先に一つ言っておくぞ」



「何?」

「この空間にいるからと言って外で時間が経たない訳じゃねえ、流れは違うと思うがな」

「ま、二、三か月位は眠ることになるかもな」

「なら、早く始めよう。私はもっと強くなる」

「いい返事だ……行くぞ」





ノアール王国にある、一軒の家。

一人暮らしでは持て余してしまう部屋の数。

それは一家が暮らせば少し狭く感じる家。

そんな家でただ一人、勇者は暮らしていた。



静かな時を過ごしていたはずだった。

突如頭にフラッシュバックする、悲鳴と血しぶき。

「あ、あああああああ」



そして勇者は思い出す。自分の犯した罪、記憶にある惨状を、命を、奪い去る瞬間を。

『命だけは!命だけは』『この子だけでも!』『お前のせいで!』『お前が生きるから』

「違う、違うんだ。私は」

不必要な惨殺、正義も悪も捨て責任から逃れた。

「誰か、許してくれ」

勇者は叫ぶ、だが誰も答えてくれる人はいない。

頭を抱えながら床を転がる勇者。



フラッシュバックも収まり、息を整え勇者は呟く。

「リラ、君に、会いたい」

涙を流しながら蹲りながら覚えてもいない最愛の人の名を呟いた。

「リ、ラ?私は、誰の名を」

その勇者の呟きに答える者は誰もいなかった。

次回から本編から外れて勇者の過去になります。

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