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フェンリルに転生した俺、人間に復讐を決意します  作者: アイスマシーン
二人の精霊
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57.悦楽の天使

ハイルデザートの王宮の一室。

その部屋のあるクリスタルから何かが形成される。

それはある大きさになった瞬間明確な形を成す。

エルメスは何も言わず、歯を食いしばりながら。クリスタルからマナを吸収する。

「人の事が言えんなぁーエルメス」

扉の方から声が聞こえる、そこには憎たらしい奴が立っている。



「ミザールか」

「随分やられたな」

「我々天使を超える者がなぜこうも続々と現れるのか。はぁ……」

「生物は歩みを止めない、我々と違い世代を超えてな」

「そうだな、だがここまでとは」

エルメスが悔しそうな顔を浮かべる。



「私は奴に、ラプラスに勝てる気がしない」

ミザールはそれを聞き笑う。

「ハハハハ、恐怖の天使が恐れをなすか」

エルメスは何も言い返さず下を向く。

「なあ、エルメス」

「なんだミザール」

「クエンに頼るというのはどうだ?」

「なんだと?」



クエン、悦楽の天使。

三大天使の頂点に立つ化け物。

一度ラプラスをここに捕えた張本人。



「二人そろって私の噂話?あら嬉しい」

噂をすればなんとやら、クエンが扉の前に立っている。

「クエン、そもそもお前があの時殺していればこんな事にはならなかったのではないか?」


エルメスがクエンに言い返す。

「あら、私に飛び火?でもね私としては一つ狙いがあった訳だし」

「狙い?」

「ええ、ラプラスが私に言ったのよ。『目的がある』って」

「目的だと?何だ」

エルメスが聞くと、クエンは怪しい笑みを浮かべる。

「一人の精霊と雌雄を決する。時間をくれと。決着をつけると。随分けなげで可愛いじゃない」



「それでも私も天使なわけでね?暫く天使として働いていなかったわけで?

一応働いたふりをする為にここに捕えた。でも生かした、いつか逃げる日まで」

「貴様クエン!そんな私情でラプラスを見逃したのか!」

「あら?エルメス、天使の信条も天命も。私の悦楽には敵わないのよ」

そう言ってクエンは舌なめずりをして笑みを浮かべる。



「それに貴方、仕事してないと天命がどうだの信条がどうだのとうるさいじゃない」

「ふざけるな!」

エルメスが剣を抜きクエンに切りかかろうとする、だがそれは叶わなかった。

なぜならクエンの手がエルメスの首を掴んだからだ。

「ちょっとちょっとそんなに怒らないで」

「きさ、ま。もう一度天使としての」

「またそれ?もう聞き飽きたわよ」

クエンはそう言うとエルメスの首を一瞬で握りつぶした。



「クエン、お前何を」

ミザールが叫ぶが、クエンは血で染まった指を舌で舐め、そして悦楽の笑みを浮かべる。「いいじゃないどうせ生き返るんだし」

ミザールの後ろでクリスタルが光り。エルメスが復活する。

「クエン!」


エルメスがそう叫び切りかかるが、エルメスは突如クエンに背中を向け棒立ちになる。

「そのまま心臓を貫いてもいいのよ。それ以上私に向かってくるならね」

そう言ってクエンはエルメスの背中を優しくなでる。

「……何故、貴様のようなものが天使なのだ……」

エルメスはそう言いながら、剣を落とす。



「知らないわ、それより貴方達はもうラプラスの件に関わらなくていいわ。もちろんアリュー・ジルベスもね」

「知っていて5年も黙るとは……趣味が悪いな」

ミザールがそう言うとクエンは笑みを浮かべる。

「貴方だって人の事言えないでしょ?」

「堅物一人に変人二人。いいバランスじゃない」

ミザールは、ため息をつき言葉を吐く。

「殺すのだろうな?」

「ええ、もちろん」


「それじゃあね、二人共」

そう言ってクエンは部屋から出て行く。

「……我々はどうすればいいのだ」

エルメスが呟くように言うとミザールがそれに答える。

「あの化け物に気負わされなければ、冗談の一つでも言ったのだがな。まあ……任せるしかあるまい」

 

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