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フェンリルに転生した俺、人間に復讐を決意します  作者: アイスマシーン
灰の王編
116/117

115.美麗な月

「……はあ、どうやったのさ」

「空間の端に向かい衝撃で空間に穴をあけた。そこから私が空間創生魔法を使用すればいい」


「簡単に言うねー」

「簡単な事だからな」

互いに視線を交わす。

一方は諦観を滲ませた瞳で、もう一方は哀れみを含んだ瞳で。



「終わりだ。抵抗しないというのなら、楽に殺してやる」

「嫌だね。最後まで遊ぼうよ」

「強がりだな」

「強がりさ」


アリューは残ったわずかなマナを練り上げる。

――これが最後。自分が一番理解していた。


【美麗な月】


昼間の空に、突如として月が浮かび上がる。

銀色に煌めくその月は、見る者すべてを魅了するほど美しかった。


「これが最後、ほんとは。君に送る技じゃないはずだったんだけどね」

「……そうか」


その言葉を聞くと勇者はアリューに【二代目の聖剣】を突き出し。

目の前で消してみせた。


「こい、受けて立ってやる」

「……はは、ありがたいね」

アリューは笑い、月が黒く染まる。

そして、漆黒の月が勇者を飲み込んだ。



やがて月は崩れ去り、勇者の姿が再び現れる。

「かったいねー君の防御魔法」

「お前こそ、死に体でこれほどか」


アリューの体は崩壊を始めかけている。

精霊、マナ体を維持できぬほど無くなってしまえば。

無となり拡散していく。


「はぁ……終わりかあ。まあ、僕の目的は果たせたかなあ」

「君は、ゼンを倒しに行かなくてもいいのかい」


「いいや、あれよりもお前の方が危険だ。完全に消滅するまで見届けてやる」


「へぇ……まあ何でもいいけど。それじゃ最後に、これだけ見逃してくれないかな」


そう言ってアリューは最後に術式を組む、体を構成するマナを使い。

仲間に、シータに最後の言葉を残すために。

「好きにしろ」

一抹の光が天へと昇っていく。


それと同時にアリューの体に限界がきた。

マナの拡散が始まってしまう。

「最後に一つ。終わりは来るよ。きっともうすぐ」

「……そうだと良いな」

風が吹き抜けた。

勇者の言葉はアリューに届かないまま、

彼の存在は虚空へと溶けて消えていった。

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