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フェンリルに転生した俺、人間に復讐を決意します  作者: アイスマシーン
灰の王編
112/119

111.天をも食らう修羅の威光

「お前は!マスターを殺して。私達を無下にして、それで復讐も計画も滅茶苦茶にするつもりなんだろ」

「……いや?前半2つは確かにそうかもしれないけど。あ、復讐もか。計画も……まあそうかもね」

「僕は君の作った計画を利用したいだけだよ、あんな世界に1ミリたりとも興味はないけど、これはチャンスだ」

「僕の目的のね」

その言葉を聞いてレースは僕に向かって剣を振るった。



「死ね!オリジナル!」

「死ねないよ、僕は」

それに対して僕もフレイヤを振るう。

「さあ、決闘だ」

剣と剣がぶつかり合う。火花が飛び散り、僕は笑った。

オリジナルがフレイヤを振るうとレースはそれを受け止める様に剣をふるう。

オリジナルは後ろに跳び、また少し笑う。

「いいね、昔の君じゃ考えられなかった」

「何が言いたい!」

レースは剣を上段に構えると、オリジナルに向かって剣を振るった。



オリジナルはそれを真正面から受け止めると、柄でレースの腹を打つ。

「僕の体は魔法を扱いずらい、勿論クローンの君同じことが言えるだろう」

「だから、何が言いたい!」

レースは叫ぶ。オリジナルはそれを否定する。

「僕の言葉に従うだけの、君ではなくなったんだね」

レースは剣を脇構えにし、オリジナルへと走っていく。

「あのな喋り方は止めたの?それとも過去を捨てたかった?」

「うるさい!」

レースの剣とオリジナルの剣がぶつかり、甲高い金属音が響いた。

「上は終わったみたいだね」

オリジナルは口角を吊り上げる。

「次は君の番だ」

そう言うとレースをフレイヤで切り飛ばした。



「ぐっ」

勢いよく壁に激突し、床に落ちる。

オリジナルは剣を構え、レースに言う。

「さて……そろそろ終わりにしようかな」

「お前はいつもそうだ!そうやって私を見下して!」

オリジナルは鼻で笑うと、剣を振るった。その剣はレースを貫通する。



「君がここまで動くのか僕にも予想できなかった。対処は出来たし利用もできたけど。それは誇っていいんじゃない?」

オリジナルはそう言うと、剣を握る手の力を強めた。

「……私は、普通に生きたかった。なんで人間じゃないの。なんでク……ロ、ン」

オリジナルはレースを剣で貫き、壁に貼り付けた。



「見下してなんかないよ、ただ同じと思ってないだけ」

「うん、君は人間じゃない。誰かに作られて誰かの養分になるしかないただの実験材料だ」

オリジナルはそう言うと剣を引き抜きレースの体は床に落下した。




「片付けは終わったよジーク」

「おう、こっちももう終わった」

「借りは完全に返した、でいいよな」

ジークはオリジナルに問う。

「ああ、これで完済としよう。ありがとう、そう言っておくよ」

「やめろ気持ちわりぃ。じゃあ、俺は行くから。もう関わるなよ」

「悲しい事を言うね」

「……ふん」

そう言うとジークは姿を消した。





「あれが……アク」

少し遠くからシータ達はアクを見ていた。

その巨体は遠めでも確認できるほど大きく。

そして、その圧倒感は見るものを絶望させるには十分だった。

「何あれ……おおよそ生物の範疇じゃない」

エヴィリーナはアクを見て言った。

アクの周りにいる人間達が必死に抵抗をしているものの効いている様子はない。

そして、アクは動いた。

「何をして――愚かな子——。死んでいく――に何を求め――?」

所ところがノイズになるその声は聞こえるのではなく脳内に響いて行く。

「頭が……割れる……」

全員が頭を抑える。それほどにその衝撃は強かった。

「回帰せよ、単純な世界へ」

アクがその天秤を掲げた。



「【愚者ノ天秤】」

アクが何か唱えると、巨大な天秤が平行に戻る。

天秤はゆっくりと傾き始める。その傾き方は徐々に速度を上げていく。

そして、ついに均衡が崩れる。次の瞬間、アクの周り全てが闇に包まれた。

まるで黒い絵の具で塗りつぶされたかのように光がなく何も見えなくなる。

シータ達は狼狽えた。しかし、すぐにそれは晴れた。

だが周りを見て呆然とした。

先ほどまでアクに立ち向かっていた人間達が全員、空に浮かぶ十字架に打ち付けられていた。

打ち付けられた人間達は生きているようだが、誰一人としてその眼に生気と呼べるものはない。そして聞こえてくる声。



「世界は間違っている」「回帰せよ」

「秩序を壊せ」「新たな世界を」

それは呪いのようだった。あのアクという者から発せられる言霊なのか、それとも死体の無念か。

「何……これ……」

シータは茫然とその光景を見つめる。

「……これが暴走した神の姿?」

エヴィリーナはただ冷静に現状を見てそう呟いた。

アリューが否定する。

「あれは神じゃない、もっと邪悪な何かだ」

「皆。帰ろうあんなのは死とも呼べない。最悪の結末だ」

シータがそう言うと皆、無言で俯いた。



「私とアリューで何とかしてみる。できるか分からないけど」

「何馬鹿なこと言ってる」

エフレンが反論しようとした瞬間、指を弾く音共に皆が転移された。



「アリュー……」

「うん、そうだね……あの子達が行っても無駄死にだ」

アリューは随分真剣な表情で悩んでいるようだった。

「封印を解くしかないみたいだね、君の魔術【天をも喰らう修羅の威光】を」

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