表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェンリルに転生した俺、人間に復讐を決意します  作者: アイスマシーン
灰の王編
107/119

106.神産み

転移が完了したシータとエルメスは、そのハイルデザートの目の前へと転移した。

「【空間遮断】か……中には転移できなかったな」

「それと結界が張ってある、壊せば見つかると思ってくれ」

エルメスは淡々と説明した。

「この空島、壊してもいいか?」

「……ああ、もう必要のない場所だ」

エルメスは頷き、シータは言葉を紡ぎ始める。

「【天撃つ音響く夕立ち】」

ハイルデザートの上空に現れた幾何学模様――それはただの魔法陣ではなかった。

それはハイルデザートよりも大きく。強大な力を示していた。



「……何なんだ最近の化け物共は」

エルメスが驚きと警戒の入り混じった表情でシータを見た。

シータは無言で手を掲げ、魔法陣をさらに拡大させる

「一撃で始末する」

彼女の声が響いた瞬間、魔法陣の中心から光が雨の様に降り注ぐ。

轟音を響かせながら光の雨はとどまる事を知らず全てを貫通し降り注ぐ。

「っ……!」

エルメスは思わず目を細め、目の前の光景を見つめる。

ハイルデザート全体を包み込んでいた光撃が収まると、砂塵の向こうから天使たちが姿を現した。


「……迎撃部隊か?」

シータは僅かに口角を上げ、エルメスに問いかける。

「ああ……ミザールの手勢だな」

そう答えたエルメスは天使の姿を見て狼狽えた。

迎撃に来た天使達は先の攻撃でだろうか、体の半分を失った者、その眼に生気の欠片も無い者までいた。

「死んでいる……?どうゆうことだなぜ動いている?」

エルメスが呟くと、シータは淡々とした口調で答える。

「動けなくなるまで壊せばいい話だ、自分の身は自分で守れるよな」

シータは静かに天使達へと歩みを進める。

「ああ、問題ない」

エルメスは剣を抜き、構えた。

そして、シータとエルメスは天使の群れへと突っ込んでいく。




ハイルデザート:大聖堂

先の攻撃から唯一この大聖堂は形を保っていた。

「レース!何が起こっている」

ミザールが怒りをあらわにしながら、レースを問い詰めた。

「僕だって知らないよ、ただの侵入者でしょ」

「異常事態だ、どうするレース。贄が死に兼ねんぞ」

ミザールは振り返り、贄達に視線を向ける。

大聖堂の奥、荘厳な光に照らされた巨大な祭壇の前に、整然と並ぶ者たちがいた。

二千組の妊婦とその番――彼らはまるで意志を持たぬ操り人形のように整列し、微動だにせず祈りを捧げている。


妊婦たちの腹は膨れ、まるで何かを内に宿しているかのように不気味な脈動を繰り返していた。彼女たちの顔には表情がなく、瞳は虚ろで、生きているのかさえ判然としない。ただ、唇がわずかに動き、規則的な言葉を呟き続けていた。

「……主よ……楽園を……」

その声はまるで虫の羽音のように小さく、しかし不気味なほどに統一されている。

隣に立つ番の男たちもまた同様だった。彼らは妊婦たちの肩を優しく支えながら、同じように目を閉じ、無表情のまま祈り続けている。

「貯めに貯めたマナを使うとしても、儀式に必要な分を差し引いて。出入り不可の結界を張るとしたら2時間持つかどうかってところだね」

レースが淡々と告げる。


「我が向かい、【平の調】で時間を稼ぐ」

ミザールは苦々しげな表情で呟くと、レースは呆れたように首を振った。

「時間を稼ぐの良いけど、【平の調】にも限界があるでしょマナ切れになった瞬間終わりだよ」

「ならどうする、【平の調】で向かわせた死んだ天使達も次々動かなくなっている。このままでは贄が死ぬぞ」

ミザールは苛立ちを隠そうともせずにレースに食ってかかる。

「うん、だから今儀式を始めよう。楽園を始めよう」

「……何を言っている、贄の準備が整っていないだろ」

「出来てるよ、贄は十分熟してる。そうだよねカラサトス」

レースが誰もいない空間に話しかけると、彼女の影からずるりと黒装束に身を包んだ男が現れた。

カラサトスと呼ばれた男はゆっくりと頷きながら答える。

「はい、レース様の言う通り贄たちの体は十分熟しております」

「カラサトスの力でもう贄は熟してる」


「何だお前は、いやそんな事はどうでもいい。レース貴様、この我を出し抜こうとしていたのか?」

「そうだよ、でもその計画も崩れちゃったけどね」

レースが微笑むと、ミザールは怒りに顔を歪めた。

「だが……いい熟していると言うのなら我主体で儀式を始めるまでだ」

「ああ、頼むよ。カラサトス、時間を稼いでくれる?」

「勿論です、レース様」

カラサトスは恭しく一礼すると、影に沈む様に姿を消した。

「さあ、始めようか。楽園の始まりだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ