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フェンリルに転生した俺、人間に復讐を決意します  作者: アイスマシーン
灰の王編
102/119

101.虹と見紛うこの灰を

「では、行くぞ!」

灰の王が動き出す。その剣は真っ直ぐにシータに向かって振り下ろされる。

しかしそれを彼女は完全に見切ると掌底を灰の王に叩き込んだ。

「【我懐】」

続けて攻撃を仕掛ける。

「【天鎖苦殺:黒】」

黒く光るマナが、天と天を線で結びそれは灰の王の体に幾つもの穴をあけようと襲い掛かる。



それに対し灰の王は瞬時に身を捩らせ、致命傷を避けるが、それでも黒いマナの線が彼の体を深く抉り、血のような灰が舞い散る。

「……なるほどな、さすがだな、シータ=スコール。」

灰の王は口元に薄い笑みを浮かべるが、その目には油断の色は一切ない。彼の体は再生を始めるも、シータの攻撃の余韻がその再生を邪魔するようにじわじわと残っている。



灰の王が指を鳴らすと振り落ちる灰が形を変え、灰の王の分身を作り出した。

「行け」

灰の王がそう命じると、分身がシータに向かって襲い掛かる。

その速さは本物と遜色なく、また分身体自身がシータに攻撃を加える。

「【罰天】」

分身の攻撃を受け流しながら魔法を詠唱すると天から降り注ぐ光が分身たちを焼き尽くし、灰は散っていく。

灰の王はその様子を見守りながらも、シータに向かってさらに追撃を加える。



「【一寸の炎木】」

樹木がシータに向かって伸びていき、その体を貫かんとする。

その攻撃をよけきれず何本かの樹木が彼女の体を貫いた。

するとその樹木は発火し灰になっていく。樹木は灰になり、その灰も散っていく。

「マナ体じゃなかったら随分なダメージだったな」

シータは貫かれた傷を再生しながら呟いた。彼女は余裕そうな笑みを浮かべていたものの、その身体にはいくつもの穴が開いている。

しかしそれも瞬く間に治っていくのが見て取れた。

(本当に化け物だな)



灰の王はその姿を見ながらも冷静に分析していた。

【虹と見紛う(アッシュ・ザ)この灰を】(・グレイ)

灰の王の詠唱が終わると同時に、彼の周囲の灰が激しく舞い上がり、灰の渦を形成した。

渦が凝縮されていく、そして灰の塊となり彼の手のひらに収まった。

灰の王が手にした灰の塊は、まるで生きているかのように微かに脈動し、虹色の光をわずかに放っていた。

その塊は見た目には小さくても、その存在感は圧倒的で、周囲の空間に不気味な静寂をもたらしている。

「……行くぞ」

灰の王はそう言いながら、その塊を握りしめた瞬間、巨大な衝撃波が周囲に広がった。

灰色の爆発にその中では嵐が巻き起こっていた。灰の嵐、それは物質もマナも全て一瞬にしてを灰燼へと返す。

シータは灰の嵐に包まれた瞬間。体が次々へと削られていく、全力でマナを放出するも徐々にその攻撃に耐え切れなくなってきている。



「なるほど、確かに……」

「この魔法ですら形を保てるとはな。だがどうだ、この嵐では魔法すら灰燼と化す。貴様のマナ体もいつまで持つかな?」

シータは灰の嵐に飲み込まれ、その体は徐々に削られていく。

「降伏しろ、すればすぐに止めてやる」

灰の王はシータにそう告げる。

「降伏……お前、何か忘れて無いか?」

そうシータが言い放った瞬間その眼が紅く煌いた。



「【現実改変】」



瞬時にして灰の王の魔法はかき消された。

「……馬鹿げた力だな」

「それは、私もそう思う。……さて、どうする?」

シータは灰の王をじっと見据えたまま、軽く肩をすくめて言った。その態度には挑発的な気配はなく、ただ結果を見届けようとする冷静さがあった。

「……降伏だ」



「そうか【契約】」

「今、我契約を結ぶ。契約は無し。破れば罰その罰は痛みとする」

「なるほど……我、契約を受ける。契約は服従。破れば罰その罰は自死とする」

「……これが契約か」

彼の顔には微かな苦笑いが浮かび、彼のプライドが砕けた音が聞こえるようだった。それでも、その表情にはどこかすっきりしたものも見て取れた。



「さて、これでようやく話ができるな」

シータは灰の王に向かって軽く手を差し伸べた。その仕草には威圧感はなく、どこか親しげなものさえ感じられた。

「話してもらうぞ、内容によってはその同盟を受けてやる」

灰の王はその手を掴み立ち上がる。

「手短に話すぞ」

そう言いながらも、彼の話は長くなりそうだった。



「なるほど、服従しているから噓もない……【実越仙境】か」

シータは灰の王から話を聞き、その内容を吟味していた。

灰の王はただ静かに彼女の言葉を待っていた。

(私達が保護しているエルフをその【実越仙境】に移せば……)

「まあ、お前にも決定権はある。少し見て回るか」

シータの提案に、灰の王は頷いた。

シータと灰の王は拠点内の廊下を静かに歩いていた。



「なるほどな……成り行きでここまでの組織を作り上げるとは」

「話をきいた限り、お前も似たような物だろ」

シータと灰の王はこれからの事を話し合っていた。

そして、その足取りはある場所を目指していた。

「ここだ」

目的地に辿り着いた二人はその部屋に入っていく。





「んーほい!」

アリューが弾むような声を上げると、目の前の行き止まりだった場所に新たな空間が生まれる。まるで壁そのものが霧のように溶け、奥へ続く通路が現れたのだ。

「この拠点も最初のころと比べるとだーいぶ広くなったね!」

「確かになー。それにしてもやっぱアリューの力……便利すぎんだろ」

デルが感心したようにアリューを見やる。

「んーまー僕だからね。補助魔法の精霊を崇めるだー!」

アリューはおどけたように両手を広げる。

だが次の瞬間、アリューの表情が変わった。



(……終わったみたいだね)

「皆、振り返ってみて」

その言葉にデルは振り返り、そしてアリューの視線の先にあるものを見た。

「気づいてた?」

シータがアリューにそう問いかけると。

「まあね~」

皆の視線が集まるのはシータの後ろについてきた一人の青年。

「皆、お客さんだよ」

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