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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

オリバー&ラリー

作者: 雄太

 

 彼、オリバーは同僚であるラリーが運転する車で事件現場に向かう。


 警察無線から流れてきた情報では現場は

 繁華街を一本入った路地の雑居ビルである。その屋上で男の銃殺体が発見された。


 発見現場である繁華街は警察内部でも有名なヤクザ共の溜まり場となっている。


「また、ヤクザ関連か、」


 助手席でコーヒーを啜るオリバーは呟く。先日も犯行現場は違えど、この繁華街でヤクザの死体が見つかっていた。その死体は目をくり取られ、司法解剖の結果内臓が破裂していたことが判明。しかし犯人につながる証拠はなく、すでに捜査は終了していた。


「また、犯人すらみつからないんですかね?先輩。」


 その呟きに答えるラリーだがその目はコーヒーを忌々しくチラ見している。彼も警察官の端くれ、流石に前を向いている。


「どうだろうな、ここ最近そんな事ばかりだがな・・・」


「ゲソ痕があっても、市販品であり、大量生産品、犯人には至らないか」


 先日の事件現場からは被害者のものと、犯人のものと思われるゲソ痕が見つかっているが、その靴は捜査の結果大量生産品だと言うことが判明したのみ。


 この近辺は治安が悪く防犯カメラが設置されているが、それも破壊済み。たとえ修理したところで翌日にはカメラの姿すらなくなることが日常である。なのでここ最近は防犯カメラの修理すらしていないのが現状である。


「この近辺にいるのは全部ヤクザだ、だから律儀に通報なんてしてくれやしない。例えしたところでそれは敵対組織の犯行とまでしかわからない。まぁ、そいつらが本当のことを言ってるのかすら怪しいけどな」


 時々、通報自体来ることはある。その多くはヤクザ同士のチクリ合いと言ったところである。自分たちでやった犯行も敵対組織の犯行として通報していることも多く、事情聴取すら行われていない。


「今回の通報者は?」

「また、ヤクザだ。内容的には屋上で発砲音が聞こえた。」


 オリバーは不自然なタイミングで言葉を切る。


「その先は?」

「ない。そこで切られたみたいだ、指令センターがかけ直しても、再度繋がることはなかった、そしてその携帯を逆探知したら犯行現場前のビル。ついでに言うとその携帯も飛ばしだ」


 ラリーの運転する車は交差点を左折し繁華街に入っていく。


「つまり完全にヤクザの通報ですか」

「そうだ。ここ左だ」


 オリバーはそう、指示を出すとラリーはハンドルを回す。


「まっすぐ行って突き当たりだ」


 路地に入っていくと既に先行して到着していた別のパトカーが3台程度停まっていた、その前で規制線を張っている。


「止まれ!」


 規制線の前に立つ警官が赤いライトがついた棒を振りラリーの車を止める。


「どのぞの野次馬か知らんが、いまここは規制中だ帰れ!」


 ラリーの乗る車は警察のパトカーではなく赤の自家用車に覆面用のサイレン装置を付けたものである。だから良くこうやって勘違いした警察官に止められる。


「身内だ」


 ラリーはダッシュボードの上に置いてある警察手帳を見せる。

 もしここで胸ポケットから取り出そうとしたらその場で血の雨が降ることとなっていただろう。


「失礼しました!」


 その警察官は急いで規制線を外しラリーの車を通らせる。


「なぁ、いい加減普通のパトカーに乗れば?」

 毎回この茶番に付き合わされるオリバーが言うが、ラリーの決まり文句は決まっている。


「あんなパトカー、ダサいじゃないですか。なら俺の愛車の方が良いですよ」


 そう言いハンドルを叩き、車を停める。


「寒いなぁ、ホットコーヒーもアイスコーヒーになっちまう。これが夏ならハッピーだか、夏じゃぬるくなるのか。」


 2人はほぼ同時に車から降りると、そこへ近づいてくる人影あった。


「オリバー!、またあったな」


 笑いながら近づいてきたのはオリバーの同期だあるアグロであった。


「アグロ。一昨日ぶりだな」

「こんな早くお前と顔を合わせるのも辛いぜ、なあ、ラリーそうだろ。」


 ラリーに話を振るがそのラリーは、はいともいいえとも言えず見目を泳がせている。


「ノリが悪いな、」

「お前が変なことを聞くからだ、そんなことより上は?」


 上つまり事件現場である。先ほだからラリーが見ている屋上は投光器の明かりで朝と錯覚するほど明るくなっている


「見に行くか?」

「だろ」


「死体コレクターか物好きだな」


 アグロはそう茶化すだ茶化しオリバーが文句を言う前に歩き出す。


 エレベーターで6階まで上がりいつも通りオリバー達は靴にビニールをかけ。手袋をはめる。


「寒いなぁ」


 屋上に向かう階段の扉から外に出ている一言目がそれである。冬の時期の捜査の時建物の中から出ると第一声はいつも『寒ぁみー』である。


「お前いつもそれ言ってんな」

「だって寒いだろ、寒いのにあっついって言うバカいるか?」


「それとこれとは話が別だろ」


 いつも通りのバカ発言に渋い顔を見せる。


「あと早く行きましょう?寒いです。」


 ラリーが急かすと2人はぶつぶつ文句を言いながら奥へ向かう。


 そこでは既に鑑識が数名、写真を撮ったりゲソ痕や指紋、被害者のDNAを採取している。


「今回もゲソ痕は大量生産品ですね、」


 鑑識の1人がこちらに向かってきて報告する。


「被害者の指紋は前科持ちのヤクザ。アダム・スコットの物と一致。DNAは2種類出ました」


「どっちか片方が犯人のものか、」


 オリバーは話を聞きながら、被害者であるアダムの脇にしゃがみ込む。


「ええ。その可能性が高いかとなので本部でこれから検査します。」


「犯人の指紋は出ていないと」

「ええ、出ていません、あと硝煙反応が出てますが、拳銃の特定には至らないでしょう、無許可の自家製銃が沢山ありますので。」


「だろうな」

「それと引き摺られた跡がありました。」


 鑑識係は犯人のゲソ痕の少し横に立つ。


「ここから拳銃の硝煙反応が出てますので、被害者を呼び出した犯人はここから拳銃を発砲した事となります。」


 鑑識が立っているのはいま被害者の遺体がある位置から少し左を向いている。

 そして被害者が引き摺られたと思われる位置だけ積もった埃が薄れている。


「被害者は、犯人に呼び出され、ここ来て、呼び出されたものも、犯人は不在、被害者は奥に向かい、その背後を撃たれた」


 オリバーはそう推理するが鼻を折られる。


「いえ、背後から犯人は近づいた模様ですが物音に気づいた被害者は振り返っています。なので弾は体を貫通し脊髄を破壊して、どこかに消えました。」


「どこかって?」

「さぁ?建物から下まで落ちたのでは?」

「発見不能か、」


 ここら辺は拳銃の弾弾丸が落ちていることは普通のことである。


「そう見たいですね。しかし一つ朗報が」


 鑑識はそう言い透明なビニール袋を取り出す。そこには携帯が一つ入っている。


「被害者の携帯です。」


 オリバーそれを受け取りビニール袋の上から操作する。


「一応調べましだが逆探知も不可、飛ばしの携帯です。履歴は一件を残し全て完全削除されておりました。では私たちはこれで一通り資料は取りましたので」


 鑑識はそう言い立ち去るが。誰も返事をくれない。


「返事しても良かったのでは?」

「最後の通話履歴はこのハミルトンって奴か、どのみち飛ばしだろうな、まぁ当たってみるか」


 オリバーがいじっている携帯の最後の通話履歴には『ハミルトン 15:25』と表示されている。

 その前にの履歴はなく、消されたのか未使用なのかオリバーには判断がつかなかった。



「よし行くぞ」


 オリバーはそう言い階段を降りていく。


「お前も大変だな」



 ●


 警察署に併設されたオリバー達専用の自室に戻るとラリーはすぐ資料を集め出す。


 ホワイトボードには、被害者であるアダム・スコットの写真がある貼られている。

 その下には『着信履歴 PM 15:25』と書かれている。


「この携帯は被害者の物、最後の通信履歴はハミルトンって奴か、まぁ飛ばしの携帯と見て間違いない。この手の事にモノホン使う馬鹿はいないだろ」


 オリバーは携帯をプラケースに戻す。


 普通、鑑識から直で事件の資料を貰うことなどあり得ないだろう。しかしここではこれが日常である、ヤクザ関連の事件の多く場合犯人が見つからずに捜査は終了となる事がよくある。たとえ見つかっても下っぱであり首か頭までは絶対に辿りつかない、から保管していても無駄というわけである。


 しかし今回は犯人に繋がるかもしれない切り口が見つかっている。

 そして今回はオリバーの勘が自分でもよくわからないが反応している。


「で先輩。珍しく追うなんてなんかあったんですか?」


 いつも行動を共にしているらをラリーもまたオリバーの行動の違いを指摘する。


「俺の勘が言ってる、こいつただの下っ端じゃない、何かある、何か、その何かがわからないけどな、あはは」


「先輩〜、まぁ信じますけどね先輩の勘当たりますし。こりゃでかい山になりそうきな気がしますね」


「そんなら良いんだかな、まぁヤクザと1団体壊滅させてもまた新しいのが出てくるがな。そうだ鑑識連中の鑑定の結果このゲソ痕、大体わかった」


 資料箱から鑑識が採取したゲソ痕のコピーをラリーに手渡す。


「これの何がですか?」


「鑑識の鑑定の結果。このゲソ痕はここら辺最大手のマーケット ブランの製品だ。いまアグロ達がそっちに向かってる。」


「そこまでわかったんですか、珍しい」


 これはかなり珍しい事である。10件ヤクザ関連の事件が起きたら犯人に繋がるものが残されるのは1件ほどもない下手をすれば全部繋がらない時だってある。ゲソ痕も多くの場合ヤスリで削ってある。しかし今回はゲソ痕は大量生産品と言えど大手のマーケットで売られたものそれとまだ購入して日が浅い。飛ばしの携帯もヤクザ御用達のではなく、詐欺案件であった。


「だから、きな臭い」


 オリバーの携帯の着メロが盛大に響く、いつも通りのラッパの演奏である。これはアグロからの着信を示す。


「アグロか。見つけたか?」


 携帯を取り上げスピーカーにする。


「あぁ、見つけた、ここ1ヶ月で27.5cmのその靴を買ったやつは10人いた、これから虱潰しに当たる。いまそっちにメール送る。ここの中に1人見覚えがある奴がいる。見たら驚くぞ覚悟しとけ」


 電話は一方的に切られすぐにメールが送られてくる。


「なんだろうな?まぁ、碌でもない物だろうな」


 オリバーはそう決めつけメールの着信を待つとすぐにくる。


「こいつは・・・」

「これって、マイケル・サムシングじゃないですか!あのミュージシャンの、」


 オリバーの携帯を覗き見ていたラリーが声を上げる。


 そこには黒のスーツに身を包んだ髭を生やした白人の男の宣材写真が載せられいた。

 その下には『デビュー2014年 ジャックス・エンターテイメント所属』と書かれている。


「そうだ芸能人 マイケル・サムシング 10年近く前にCDデビューして売れてたが今じゃ名前も聞かなくなったな当時はそこら中で聞こえてたが、」


「えぇ、出た当時よく聴いてました、抽象的な歌詞とそのルックスもあり若い子達はみんな聞いてました。俺もそのうちの1人ですが、ファンクラブもありましたね、俺は高くて入れませんでしたけど、こいつが犯人なんですか?」


 昔を懐かしむようにラリーは言う丁度サムシングがデビューした頃ラリーは13であった。1番そう言った時期である。


「今の所可能性が高いってだけだ決まったわけじゃない。」


 そんなことを言っているオリバーだが本心では違ってほしいと思っている。オリバーもCDを買った1人である。当時車に搭載されたプレイヤーで窓を開けて大音量で音楽を垂れ流していた。若気の至りと言った奴である。


『こいつがいま1番怪しい、借金があるそうだそれも5000万、CD発売で売れて結構羽振が良かったみたいだな。ヤクザならこいつに目を付けて強請るような気がする。今から居場所を調べる。わかったらまた連絡する。』


 とアグロから追加のメールが送られてくる。そしてすぐにオリバーが返信する。


『携帯は飛ばし。履歴は一件だけハミルトンって奴の着信履歴のみ。名前も偽名と見て間違いない。この手の事に本物使う馬鹿はいないだろ。』


 と簡潔に送る。


『簡潔ですね」

「これ以上要らないだろ」

「ハートマークとか?」

「はぁ、ならお前がやれ」


『愛想がないな』


「うるさいんだあいつは」


 絶対にその言葉は届くことはないがオリバーは携帯に向かい暴言を吐く。


「ハミルトン、聞いたことがあるような気がする。」


「ハミルトン J マルカポーネ、昔ヤクザのボスだった男だ」


 と突然現れた男、年代は50代後半と言ったところだろ。グレーのスーツがその男前さを引き立てている。ストレスからか白髪が少しある。それ以上に疲れ目がやばいが。


「なんだエドガー主任また、お邪魔虫か?。んで、マルカポーネか、どうりで聞いたことがある名前だと思った。」


「誰ですか?そのマルカポーネって」


 ラリーは警察に入って5年目若手を卒業し始めているがやはり自分が警察官になる前の事件に関してはそこまで詳しくないようだ。


「まだ、お前は知らないのか」

「マルカポーネって奴はな、」 


 オリバーが説明しようと口を開くとあからさまにエドガーが好都合だと言った感じで口を挟む。


「邪魔するなエドガー」

「オリバーのことは置いといて。マルカポーネって言うのは、止めないのか?」


 苦虫を潰したような顔でエドガーを睨む。


「そこまで言うなら説明しろエドガー主任。どうぞお勝手に。」


「お。おう、珍しいな。どうした?変なもの食べたか?」


「いいから説明しろ」


 その表情はどんどん険しくなる。そろそろ説明してもらわないと帰り際に買ってきたコーヒーのカップが破裂する。


「そうだな俺も暇じゃない。」


 オリバーは必死に手に力をかけないよう細心の注意を払う。


「ハミルトン・J ・マルカポーネ


 さっきお前達が言った現場の被害者アダム・スコットが所属してるヤクザの、元ボスだ。」


「元、ですか」

「あぁそうだ」

「今じゃもう引退して隠居生活だ、だから警察も追ってない」


 そんな事良いのかと口にしようとしたラリーだが、その前に口が挟まれる。


「人の邪魔するな」


 オリバーはしてやったりと言った表情でヒャははと笑う。今度はエドガーが苦虫を噛み潰した顔になる。


「ヒャはひしてやったり!あははは」

「チッ、こいつめ。なら説明しろ」


「ハミルトン・マルカポーネ 1975年から約30年近くneck Jackのリーダーをしていた男だ。まだその当時は小さいヤクザだったがハミルトンがボスになってから急激に成長し始めた、裏社会の警察とも呼ばれある種、裏の治安維持をしていた。」


「裏の治安維持ですか・・・」


「そうだ」 

「そうだ、皮肉な事に裏には裏の秩序ってもんがあるんだろ」

「おい、口挟まないんじゃないのかよ」


 またしても邪魔されたオリバーはさらに表情がキツくなる。


「口は挟んでない。言葉を挟んだだけだ。残念」


「まぁ。無視だ無視無視、裏には裏の秩序がある」

「それ俺が言った事」


 エドガーがまたしても口を挟むが無視する事にしたようだ。


「まぁそんなわけで裏社会には警察もなかなか踏み込めなかった。だからより急激な成長を見せたんだろ、それが7年前急に隠居生活だって俺たちのところまで来て宣言しやがった。そして自分の左腕切り落として決別したとか言いやがった」


「自分の腕を切り落とした?」


 ラリーは「正気なんですかその男」と口に出ている。普通に考えれば自分の腕を切り落とすなど、ありえないだろしかしハミルトンという男は自分の部下にも厳しいがそれは自分にも厳しいと言うとこである。だからこそ決別として腕を落としたのだろう。それも警察の前で。


「そうだ俺の目の前でスパッと落とした。表情一つ変えなかった。」


 ここからはエドガーの領分なのかオリバーは文句を言わなかった。


「そして奴は俺に向かって。今までの苦労、これで足りるかって聞いてきたんだ。」


「それでなんと」


 ラリーは今すぐにでも耳を塞ぎたいしかしここで聞かないと後悔すると言う一心で顔を引き攣らせながら耳を張る。


「足りるわけないだろって言ってやったよ。そうしたら今度は右手の親指も切り落としてこれでどうだって笑いながらその指渡してきたよ。」


 その指がエドガーの手のひらに置かれると切り口からトロッと生暖かい、液体がゆっくりと流れ出す。


 それは知らぬ間に手の甲を伝り、黒の革靴に滴る。


『これで足りるか?エドガー。』


 ハミルトンはエドガーの目から視線を離さない。激痛が走っているはずだがそんな様子を一切見せない。今も左手からは大量の血液が流れ出ている。


「お前、何が目的だ」

『ヤクザにそれ聞いちゃおしまいだろ。自分の脳みそで考えろ。俺は今から隠居する。どこに居るか手紙送ってやる。』

「そんなもの要らない。邪魔だ」


『そうか、今まで悪かった、』


 ハミルトンはそう言うとふらつきながら帰っていく。


「neck Jackはどうなる!ボスを失った組織はすぐに破滅する!」


 エドガーの足音が響くとシュと言う回転する足音が地面を這う。


『neck Jackには俺よりも凄腕のボスが生まれた。だから俺はボスを引退した。』


 それだけを言い残すとエドガーが再度この場を後にする。


「何が起こるんだ・・・」


 エドガーがその場に居合わせた警察官には緘口令が敷かれた。


 そしてその後上からはその事についての詮索は禁止という曖昧な表現で捜査にストップがかけられて。


 ハミルトンについては死んだとの噂もある。生きていれば90近くになり。死んでいてもおかしくはない。


「それでそのあとは?」


 エドガーとオリバーは揃って首を振るのみであった。


「エドガー!オリバー!ラリー!」


 奥のデスクから部長がいつもよりも大声を上げる。


「上がお呼びだ!。また、緘口令だ。」


 そして3人は局長室に向かう。


「これ以上この事に首を突っ込むな!」


 白髪が目立つ60近い爺さんが手に持つ杖を思っ切り床に叩きつける。


「なんでですか!」

「やめろ!」


 ラリーが歯向かうとするがすぐにオリバーが止める。


「先輩!良いんですか!」


「お前達に拒否権はない。」


「ラリーお前の気持ちはわかる。だが今は引け。」


 エドガーがラリーよりも険しい表情でそう告げる。


 ラリーの背中をオリバーが押し、局長室を後にする。ラリーは拳を知らぬ間に力強く握る。その拳からは血が滴り落ちる。




「お前の気持ちはわかる。だが今はその時じゃない抑え込め」

 オリバーの表情は見えない。

「それが俺たち部下の仕事だ。時に踏み込んでいけない時がある。」

 エドガーも同じように歯軋りの音が聞こえるほど歯を食いしばっている。

「良いんですかこれで」


「良くない・・・だが、これ以上俺らが何かすれば、俺たちの命が危ない。あの当時もそうだった。」





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