14 実力証明
「今回もちゃんと斃せたみたいだな」
「ジン。ってことはまた見てたのね」
「ちょっとだけな。驚いたよ、花で氷の装甲を壊すなんて」
「ブルーホワイトが見付からなかったら斃せなかったわ。あんたのお陰」
「ロゼの実力だよ」
ここの所、ロゼの成長には目を見張るものがある。
実戦に勝る修業はないというが、魔物との戦闘がロゼの才能を更に開花させたように思う。
リョクノカプスに加えてクウラリアノスまで単騎で斃してみせた。
どちらの魔物も花魔法と相性が悪いというのにも関わらずだ。
きっとロゼはこれからまだまだ強くなる。
プラチナランクの冒険者になるのもそう遠くないはずだ。
「おーい、ジンさーん」
逃げた魔族を追って来たカノンたちが今ようやく到着する。
馬車から外されたトナカイに乗って現れたのは三人。
カノン、ジハルド、レイの同期三人組。
「追い付いた……んだけど、もう終わっちゃった感じ?」
「あぁ。もう全部片付いた後だよ」
「片付いた? 逃げられたの間違いじゃないのか?」
ジハルドはクウラリアノスの死体の側にいた。
「まぁ、こいつの相手に二人がかりで手一杯だったんだろうが。やっぱシルバーには荷が重かったか」
「あの。そのクウラリアノスを斃したのはあたしだけど」
「あ? 単騎で斃したってのか? へぇ、シルバーの割りにはやるな。んじゃあ、お前はいったい何してたんだ?」
「俺? 俺は魔族と戦ったっけど」
「で、逃げられたわけか」
「いや、そこにいる」
焦土と化した戦場にはすでに薄く雪が積もり始めていた。
その中にある灰の山を指差すと、ジハルドは小首を傾げる。
「いねぇぞ。まさかあの灰の塊がそうだって言うんじゃないだろうな」
「そのまさかだよ。俺が戦って燃やしたんだ」
「お前、自分が魔族を逃がしたからってそんな言い訳が通ると思ってんのか!」
「いいや、僕はちゃんと斃してると思うな」
カノンが味方に付いてくれる。
「ジンさん、そういうつまらない嘘つくタイプの人じゃないし」
「そう言えばカノン。あなたそこのジンって人が特別昇級したって言ってたわよね? 魔族を斃して」
「なっ!? マジか。冗談だろ、ブロンズでか」
「人は色分けで判断できないってこと」
「チッ……しようがねぇ。認めてやるよ。だが、死体がないんだ。今回もまた特別昇級とはいかねぇからな」
「わかってるし、それでいい。もっと価値あるものを手に入れられたからな」
九つある尾の一つを撫でる。
マガミに続いてミタマまでも俺のところに戻って来てくれた。
俺はすくなくとも幻獣たちとは上手くやれてたらしい。
一度すべてを失った今はそれが大きな救いだ。
「これでわかったでしょ? 僕がジンさんを推薦した理由が。誰かさんは滅茶苦茶反対してたけどー」
「あ? やんのかテメェ」
「いいよー、泣いても知らないんだから」
「喧嘩はいいけど帰ってからにしなさいよ。まったく出発の時の焼き直しじゃない。学びなさいよ、いい歳した大人なんだから」
対立するカノンとジハルド。そして頭を抱えるレイ。
端から見れば同期の三人はいいトリオに映る。
本人たちにしてみればそんなことはないんだろうけれど。
「それじゃあ帰ろうか。ジンさん、僕の後ろに乗りなよ」
「なら、ロゼちゃんは私の後ろね」
「ジハルドは一人寂しく帰りなー」
「そっちのほうが気が楽だ」
トナカイの背に跨がると、軽快な足取りで雪原を駆けていく。
大人二人を乗せているとは思えない安定感のある走りだった。
悪くない乗り心地だ。
「仕事は終わったけど。まだ二日はここにいるんだよな」
「そだねー。避難させた住民を戻さなくちゃだし、街は壊れほうだいギルドは壊滅状態で大変だよー」
「出来るだけ早くエフメールに帰りたいもんだな」
こう寒いと熱いシャワーが恋しくなる。
奪還されたばかりの街じゃそういう設備は期待できないし、早く帰路につきたいもんだ。
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